腸炎の治療
感染性腸炎のうち、ウイルス性腸炎は自然に治癒することが多いです。一方、細菌性腸炎は原因菌によって使用する抗菌薬が異なります。それぞれ以下のようになっています。
腸管出血性大腸菌 O157:
まず十分な水分補給を行います。溶血性尿毒症症候群を発症した場合は透析などを行うこともあります。
サルモネラ菌:
ニューキノロン系抗菌薬が有効です。
カンピロバクター:
マクロライド系抗菌薬あるいはホスホマイシンを用います。
赤痢菌:
ニューキノロン系抗菌薬またはホスホマイシンを用います。
コレラ菌:
脱水が強いため補液を行い、抗菌薬としてはテトラサイクリン系またはニューキノロン系を用います。
チフス菌・パラチフス菌:
クロラムフェニコールが第一選択薬で、耐性菌に対してはニューキノロン系抗菌薬を用います。
黄色ブドウ球菌:
補液と対症療法が中心になります。
薬剤性腸炎の治療には、原因薬剤の中止や変更が基本となります。C. difficile による偽膜性腸炎に対するバンコマイシンなど、状況に応じて抗菌薬が使用されることもあります。
放射線腸炎の治療には、軽症であれば放射線照射を中断することで多くは改善します。
潰瘍形成などが起きている場合は 5-ASA 製剤やステロイドによる薬物療法も行います。
さらに狭窄や穿孔などが生じた場合は外科的治療が必要となることもあります (参考文献 1) 。
腸炎になりやすい人・予防の方法
感染性腸炎の予防には一般的な食中毒への感染対策として手洗いや食材の適切な処理が重要となる他、感染源に接触した人が発症するため、発症者との濃厚な接触を避けることが必要です。
そして、薬剤性腸炎は抗菌薬や NSAIDs (非ステロイド性抗炎症薬) を服用している人に起こりやすいです。また、放射線腸炎は放射線治療を受けている人に起こる可能性がある腸炎です。そのため、これらに該当する人で気になる症状がある場合はかかりつけ医に相談しましょう (参考文献 1) 。
参考文献
矢崎義雄 et al.「内科學第11版」(朝倉書店、2017年) 953-957ページ
国立感染症研究所「感染性胃腸炎とは」 (IDWR 2003年 第11号、最終更新 2012年、最終閲覧日 2024年 8月 25日)
UpToDate. “Acute viral gastroenteritis in adults.” (Last updated: March 24, 2023)
配信: Medical DOC
関連記事: