肺がんの最大のリスク因子は「喫煙」です。しかし、非喫煙者でも肺がんになる可能性があることをご存知でしょうか。特に初期の肺がんは無症状であり、レントゲンの検査では発見できないケースも多く注意が必要です。そこで今回は、実際に肺がんを発症し手術を経験した青木さやかさんと日本呼吸器学会認定呼吸器専門医である古屋直樹先生に、肺がんの早期発見と治療方法について対談していただきます。
インタビュー:
青木さやか(タレント・俳優・エッセイスト)
1973年生まれ。名古屋学院大学外国語学部卒業。名古屋でフリーアナウンサーとして活動後、上京しお笑い芸人になる。「どこ見てんのよ!」のネタがブレイクし、バラエティ番組に多数出演。2017年と2019年に肺腺がんの手術を受けた。現在は中学生の娘を育てながら、テレビ番組や舞台などで活躍中。その土地のゆかりのある人と繰り広げるトークショー「with青木さやか」を日本各地で開催中。著書に実母との確執や半生を綴った『母』(中央公論新社)のほか、『厄介なオンナ』(大和書房)、『母が嫌いだったわたしが母になった』(KADOKAWA)、『50歳。はじまりの音しか聞こえない』(世界文化社)などがある。
監修医師:
古屋直樹(日本呼吸器学会認定呼吸器専門医)
2006年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業。卒業後は聖マリアンナ医科大学病院で呼吸器内科・腫瘍内科を中心に研鑽を積む。2012年 医学博士を取得。2015年には聖マリアンナ医科大学 呼吸器内科 講師、2021年には米国オハイオ州立大学に留学し、日本人唯一の米国臨床腫瘍学会(ASCO)肺がんガイドラインメンバーとして現在もGlobalに活動中。2023年に帰国し、聖マリアンナ医科大学講師、横浜フロントクリニック非常勤医師として勤務。日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
・日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医。
古屋先生
最近の体調はいかがですか?
青木さん
検診の時期が来ないと、がんだったことを忘れるぐらい体調は良好です。
古屋先生
肺がん発覚のきっかけについて教えてください。
青木さん
最初に肺がんが発覚したきっかけは、2014年に受けた人間ドックのCT検査で見つかった小さな影です。当時はがんかどうか分からなかったので、定期的に検査することになりました。
古屋先生
経過観察中はどのような心境でしたか?
青木さん
経過観察の3年間は気が晴れませんでした。最初に受けた人間ドックの3年後には影も1.5倍に大きくなっていて、その際にがんの可能性が高いと言われました。
古屋先生
肺がんを告知されたときの心境について教えてください。
青木さん
がん家系で母も悪性リンパ腫があったので、ある程度は覚悟できていましたが、実際に告知されたときはとても怖かったですね。
古屋先生
突然のことで不安になりますよね。
青木さん
はい。肺がんに関する知識がなかったので、手術や手術後の生活が不安でした。世界から色がなくなって、見るもの全てがグレーに見えたことを覚えています。告知を受けたときに「私、死ぬんですか?」と医師に聞いたら「死ねないよ」と言われて気持ちは軽くなりましたね。
古屋先生
青木さんはがんにどのようなイメージを持っていましたか?
青木さん
「がん=恐ろしい」ですかね。瞬間的に死を想像させるイメージです。
古屋先生
肺がんについてはいかがですか?
青木さん
男の人にかかりやすく、咳が止まらず苦しいというイメージがありました。
古屋先生
自覚症状はありましたか?
青木さん
何も症状がなかったので、イメージと違うなと思いました。初期症状にはどのようなものがありますか?
古屋先生
初期の肺がんは無症状である場合が多いですね。そのため、肺がんを初期の段階で見つけるのは非常に難しいと考えられています。
青木さん
初期でがんを見つけようと思ったら定期的に検査することが大切ですね。
肺がんを疑ったほうが良い症状はありますか?
古屋先生
喫煙歴があり2週間以上止まらない咳や血痰、声枯れなどがある場合は積極的に医療機関を受診していただきたいと思います。特に初期の肺がんはレントゲンで見つけることが難しいため、肺がんを心配される場合は、CT検査の施行を医師と相談していただければと思います。
青木さん
レントゲンだけでなく、CT検査を受けることが大切なのですね。
古屋先生
はい。一般的な健康診断ではレントゲンで検査することが多いと思うのですが、青木さんはなぜ2014年に人間ドックやCT検査を受けようと思ったのですか?
青木さん
2014年当時は41歳だったのですが、40代になったら人間ドックを受けるよう先輩に誘われたからです。
古屋先生
その先輩のひと言が大きかったのですね。
青木さん
そうですね。それがなかったら検査も受けていなかったので、感謝しています。肺がんの原因について教えてください。
古屋先生
肺がんにおいて科学的に証明されている原因の一つは喫煙です。ただしタバコを吸っていないから肺がんにならないとは限りません。
青木さん
喫煙以外の原因があるということですか?
古屋先生
そうですね。喫煙以外の原因として遺伝子の異常があります。
青木さん
肺がんも遺伝する可能性があるということですか?
古屋先生
一般的に肺がんには遺伝性がないと言われています。遺伝子の異常は子孫への遺伝とは異なり、細胞の設計図である遺伝子の「突然変異」が原因です。
青木さん
日常生活で予防することは難しいということですか?
古屋先生
はい。喫煙と無関係の肺がんは誰にでも起こり得ると考えられています。
青木さん
肺がんを発症しやすい年齢はどれくらいですか?
古屋先生
肺がん患者の年齢中央値は75歳くらいだと言われていますが、20代で肺がんになる可能性もあります。
青木さん
私は肺腺がんだと診断されたのですが、肺がんと肺腺がんの違いについて教えてください。
古屋先生
肺がんは、患者さんから採取したがん細胞を顕微鏡でみた細胞の形態の違いで「小細胞がん」と「非小細胞がん」に分けられます。「小細胞がん」は進行が速いのに対して「非小細胞がん」の進行は小細胞がんよりはゆっくりです。
青木さん
進行のスピードが違うのですね。
古屋先生
はい。非小細胞がんは、さらに3つのタイプに分けられます。肺腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんです。扁平上皮がんや大細胞がんは喫煙者に多いタイプの肺がんであるのに対して、肺腺がんは非喫煙者でも発症する可能性があります。
青木さん
肺腺がんは非喫煙者でも発症する可能性があり、進行速度は比較的ゆっくりだということですね。
青木さやか「肺がん」2度目の手術を経て見つけた命の意味
配信: Medical DOC
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