10代・20代で若年性アルツハイマーを発症する原因
では、10代や20代という非常に若い年齢で「アミロイドβ」が蓄積するのには、どのような要因が考えられるのでしょうか?大きくわけて「遺伝的要因」「頭部外傷などの外的要因」「生活習慣などの環境要因」の3つがあげられます。
遺伝的要因
若年性アルツハイマー病の一部は、家族性アルツハイマー病と呼ばれる遺伝性の病気と関連しています。家族性アルツハイマー病は、特定の遺伝子(APP、PSEN1、PSEN2など)に変異が起こることで発症します。
家族性アルツハイマー病では、これらの遺伝子変異が親から子へと受け継がれるため、若年で発症するリスクが高まります。ただし、若年性アルツハイマー病全体の中で家族性アルツハイマー病が占める割合は少なく、多くの場合は遺伝以外の要因も複雑に絡み合っていると考えられています。
頭部外傷などの外的要因
過去に頭部外傷を経験したことがある場合、若年性アルツハイマー病を含む認知症のリスクが高まる可能性が示唆されています。
Farrerら(2018)の研究では、若年性アルツハイマー病患者における頭部外傷の既往歴を調査し、その関連性を検討しています。結果、頭部外傷の既往がある患者では、アミロイドβの脳内蓄積がより早く進行する傾向が認められました。
頭部外傷は、脳に直接的なダメージを与えるだけでなく、炎症反応や酸化ストレスを引き起こすことでアミロイドβの蓄積を促進し、若年性アルツハイマー病の発症リスクを高める一因となっていると考えられています。
乱れた生活習慣
直接的な原因ではありませんが、乱れた生活習慣は脳の健康に悪影響を及ぼし、若年性アルツハイマー病の発症リスクを高める可能性があります。
●不健康な食生活: 脂肪分の多い食事や糖分の過剰摂取は、脳の血管にダメージを与え、血流を悪化させる可能性があります。脳への栄養供給が不足すると、神経細胞の機能が低下し、認知症のリスクが高まります。
●運動不足: 運動不足により脳の血流が神経細胞の成長しにくくなり、脳の老化を早める可能性があります。
●睡眠不足: 睡眠は脳の老廃物を除去し、記憶を整理するのに重要な役割を果たすため、睡眠不足により脳の老廃物が蓄積しやすくなります。
●喫煙: 喫煙は、血管を収縮させ、脳への血流を減少させます。また、喫煙による酸化ストレスは、神経細胞にダメージを与え、認知症のリスクを高めます。
●過度の飲酒: 過度の飲酒は脳細胞を直接的に損傷し、記憶や学習能力を低下させる可能性があります。また長期的な飲酒は脳の萎縮を引き起こし、認知症のリスクを高めます。
これらの生活習慣は、単独で若年性アルツハイマー病を引き起こすわけではありませんが、複数の要因が重なることで、発症リスクを高める可能性があります。
若年性アルツハイマーになりやすい人の特徴
遺伝的要因
若年性アルツハイマー病の患者さんの約10人に1人は、特定の遺伝子の変化が原因で発症しています。これを「常染色体優性家族性アルツハイマー病」と呼びます。
例えるなら、これは宝くじのようなものです。一般的なアルツハイマー病では、 多くの人が宝くじを買っていますが、当たる人はごくわずかです。一方、常染色体優性家族性アルツハイマー病にみられるような特定の遺伝子を持っている人は、最初から当たりくじを持っているようなものです。そのため、若くしてアルツハイマー病を発症する可能性が非常に高くなります。
例えば特定の遺伝子として、PSEN1、PSEN2、APPなどがあります。これらの遺伝子は、親から子へと受け継がれます。
頭部外傷の既往
若年性アルツハイマー病は、若い頃に頭部を強く打つ経験、つまり頭部外傷の既往がある場合に、そのリスクが高まる可能性が指摘されています。例えば、若い時に
●学生時代にラグビーやサッカーをしていて、何度も頭を打ったことがある
●幼少期に転倒や転落事故を起こしたことがある
●バイク事故で頭を強く打ったことがある
などの人は注意が必要です。
配信: Medical DOC