「十二指腸潰瘍」の初期症状はご存知ですか? 原因を併せて医師が解説

「十二指腸潰瘍」の初期症状はご存知ですか? 原因を併せて医師が解説

監修医師:
大坂 貴史(医師)

京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

十二指腸潰瘍の概要

胃で消化された食べ物や飲み物が次にたどり着く場所が十二指腸とよばれる器官です。
十二指腸潰瘍とは、その名の通り十二指腸の粘膜に潰瘍ができてしまい、それに関連した症状が引き起こされます。
十二指腸潰瘍の多くは無症状です。症状のある十二指腸潰瘍の場合は上腹部痛や食後の上腹部痛不快感、満腹になるのが早くなる、吐き気などが現れます (参考文献 1)。
十二指腸潰瘍の合併症としては、出血や、潰瘍が深くなって穴が開いたり、穴が空くことによって十二指腸の中と他の臓器が繋がってしまうことなどが挙げられます (参考文献 1)。
十二指腸潰瘍の2大原因は胃潰瘍と同じく①ピロリ菌の感染②消炎鎮痛剤である NSAIDs の利用と言われています (参考文献 2)。
診断は主に上部消化管内視鏡 (いわゆる胃カメラ) で十二指腸潰瘍や胃の粘膜を観察することによって行われます。癌などの悪性腫瘍との鑑別が問題になる場合は、内視鏡での観察と同時に潰瘍周辺の組織を内視鏡的に生検し、顕微鏡で組織を詳しく確かめることもあります (参考文献 1)。
胃潰瘍の治療には①ピロリ菌感染がある場合にはピロリ菌の除菌をする②NSAIDsと呼ばれる抗炎症薬を利用している場合には、その服用の必要性について見直す③胃酸の産生を抑える薬を服用するなどがあり、胃潰瘍の原因や状態に応じて使い分けたり組み合わせて治癒を目指していきます (参考文献 3)。

十二指腸潰瘍の原因

十二指腸潰瘍の原因として多いのは、胃潰瘍と同じく①ピロリ菌感染②消炎鎮痛剤であるNSAIDsの使用の2つとされています (参考文献 2) 。

ピロリ菌と聞くと胃のイメージが強いかと思いますが、十二指腸潰瘍の患者の多くがピロリ菌に感染しているとされています (参考文献 4)。
胃潰瘍と共通する事項も多いですが、ピロリ菌が十二指腸潰瘍の発症につながるメカニズムとして考えられているのは①胃酸分泌の増加②十二指腸の粘膜の一部が胃の粘膜に置き換わってしまう③ピロリ菌に対する免疫反応④粘膜を守る因子の産生がピロリ菌感染によって抑制されるの4つです。
「②十二指腸の粘膜の一部が胃の粘膜に置き換わってしまう」が分かりにくいと思うので簡単に説明します。ピロリ菌感染によって胃酸の分泌が増える→胃から十二指腸に流れてくる食べ物の酸性度が通常よりも強い→長く続くと普通の十二指腸粘膜では強い酸に耐えられないので、胃の粘膜になってしまう→これらを繰り返すといった感じです (参考文献 4) 。

NSAIDsは消炎鎮痛剤の一部で、アスピリンなどの薬剤が含まれています。NSAIDsが阻害する生化学経路に粘膜保護作用のある物質があるため、NSAIDsの過度な服用は潰瘍形成につながるとされています。

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