扁桃炎の治療
溶連菌感染症では抗菌薬による治療をしますが、伝染性単核球症や咽頭結膜熱では有効な治療がないため対症療法をしつつ、経過観察となります (参考文献 3, 4, 5) 。
なお、咽頭炎・扁桃炎全体に占める溶連菌感染症の割合は小児で 15-30%、大人では 5-10% とされており (参考文献 2)、ウイルスが原因のことも多いため、抗菌薬の効果が期待できるような症例はそこまで多くないというのが実情です。抗菌薬は細菌に対する薬剤であり、全く別の病原体であるウイルスには効果がありません。
また、溶連菌感染症に対して使うペニシリン系の抗菌薬を伝染性単核球症の患者に対して投与した際には、抗菌薬に対する身体の反応として高率に皮疹が出ます (参考文献 3)。このようなことから扁桃炎症状のある患者に安直に抗菌薬を処方することは危険とされています。
扁桃炎になりやすい人・予防の方法
扁桃炎は感染症ですから、感染した人が近くにいる環境や、多くの人が集まり接触感染や飛沫感染のリスクが高い環境は発症のリスクとなります。
伝染性単核球症は思春期以降の未感染者とウイルス排出者の間での唾液を介した感染が主な感染ルートなので (参考文献 3)、初めてパートナーができた場合には発症のリスクがあるといえるかもしれません。
※EBウイルスに感染したことがあるか否かは血液中の抗体を測定すれば把握できますが、思春期より前の感染では症状が出ないことが多いため、検査なしで自分がEBウイルスやサイトメガロウイルスに感染したことがあるか否かを判断することは難しいと思います (参考文献 3)。
咽頭結膜熱は主要な症状が消退した後2日を経過するまで出席停止となるので、周りに感染を広げないためにも自宅でしっかりと療養しましょう (参考文献 5)。
予防のためには手洗いなどの手指衛生や、マスクの着用などの基本的な感染対策が有効となります (参考文献 3, 4, 5)。
COVID-19 (新型コロナ感染症) ではアルコールによる手指衛生が有効だったこともあり、その完便さも含めてアルコール消毒だけで済ませてしまう方もいるかもしれませんが、しっかりと石けんと水道水を使って手を洗いましょう。
参考文献
1.Takács AT et al. Diagnosis of Epstein-Barr and cytomegalovirus infections using decision trees: an effective way to avoid antibiotic overuse in paediatric tonsillopharyngitis. BMC Pediatr. 2023 Jun 17;23(1):301.
2.Bisno AL. Acute pharyngitis. N Engl J Med. 2001 Jan 18;344(3):205-11.
3.国立感染症研究所. 伝染性単核球症
4.国立感染症研究所. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは
5.国立感染症研究所. 咽頭結膜熱とは
6.Fine AM, et al . Large-scale validation of the Centor and McIsaac scores to predict group A streptococcal pharyngitis. Arch Intern Med. 2012 Jun 11;172(11):847-52. doi: 10.1001/archinternmed.2012.950. PMID: 22566485; PMCID: PMC3627733.
配信: Medical DOC