歯の詰め物「セラミック」と「金属」のメリット・デメリットと選び方のポイントを歯科医が解説

歯の詰め物「セラミック」と「金属」のメリット・デメリットと選び方のポイントを歯科医が解説

歯に入れる詰め物で、セラミックと金属、どちらを選べば良いか迷っている方も多いのではないでしょうか。「見た目が気になる」「長持ちさせたい」「費用を抑えたい」など、詰め物に対する要望は個々によって様々です。そこで、それぞれの材質のメリット・デメリットや選び方のポイントなどを、神保町ミセ歯科・矯正歯科の三瀬先生に詳しく解説してもらいました。

≫【かんたん解説】歯のセラミック治療とは

監修歯科医師:
三瀬 太記(神保町ミセ⻭科・矯正⻭科)

日本大学歯学部卒業。東京医科歯科大学歯学部歯周病学講座入局。その後、神保町ミセ歯科・矯正歯科を開院。患者様の不安に寄り添い、丁寧な説明と対話を重視しながら個々のペースに合わせた診療を行う。院内では各専門分野の歯科医師が連携し、患者様一人ひとりのニーズに対応した治療法を提案している。日本口腔インプラント学会、日本歯科保存学会所属。日本歯周病学会認定医。

セラミックvs金属 それぞれの詰め物の基礎を理解しよう

編集部

セラミックと金属、それぞれの詰め物の特徴を簡単に教えてください。

三瀬先生

セラミックは一般に「白い詰め物」で知られており、歯科で使用する材質の中では審美性や耐久性に最も優れるほか、金属アレルギーの心配もありません。金属は一般に「銀歯」と呼ばれる詰め物が代表的で、保険治療でよく使用されます。強度に優れ、長年使用されてきた実績もありますが、金属色なので見た目が目立ちます。また、金属アレルギーの方には使用できません。

編集部

セラミックと金属の詰め物は、それぞれどのような成分が含まれていますか?

三瀬先生

セラミックはお茶碗やお皿などに使用される陶材の一種で、ポーセレンや二ケイ酸リチウムなどが主原料となります。これにくわえ、近年はさらに強度が高い「ジルコニア」も人気で、こちらも様々な種類があります。また、従来型のセラミックは接着の技術が進んでおり、接着の強さが以前よりも格段に向上しているのが特徴です。金属の詰め物は、主に金銀パラジウム合金が使われています。この金属には金、銀、パラジウムのほかに、銅や亜鉛などが含まれています。

編集部

セラミックと金属の保険適用や費用の違いを教えてください。

三瀬先生

セラミックは自由診療(保険適用外)なので、歯科医院によって料金が異なりますが、一般的な目安は6万円から8万円くらいです。一方の金銀パラジウム合金の詰め物は、保険が適用できます。費用の目安としては、歯を削る時に1000円から1500円程度、歯につけるときに3000円前後かかります。

編集部

セラミックと保険適用の金属で、寿命に違いはありますか?

三瀬先生

どちらも治療後の適切なメンテナンスで長く使用できます。しかし、物性や使用する接着材(セメント)を考えると、金属のほうが劣化しやすい傾向があるといえるでしょう。文献によると、金属の詰め物(銀歯)の10年予後は55%と報告されており、10年以内に45%ほどは何らかのトラブルが起こる可能性があります。これに対して、セラミックで10年後にトラブルが起こった割合は約10%と金属に比べて低いことがわかっています。

セラミックと金属両者の詰め物のメリット・デメリットを徹底比較

編集部

セラミックの詰め物のメリット・デメリットを教えてください。

三瀬先生

セラミックの詰め物は見た目が自然で美しいことが最大のメリットです。また、汚れがつきにくく、むし歯や歯周病のリスクを軽減できるほか、金属アレルギーの心配もありません。デメリットとしては、従来のセラミックは衝撃に弱く、噛み合わせや食いしばりで割れやすいのが欠点でした。しかし、ジルコニアの誕生によりこの問題は解決できるようになりました。ただし、ジルコニアは調整が不十分だと噛み合わせる歯を削ってしまうおそれがあるため、調整には細心の注意が必要です。

編集部

では、金属の詰め物のメリット・デメリットはいかがでしょうか?

三瀬先生

金属の詰め物は、強い噛み合わせに耐えられるのがメリットです。しかし、金属特有の色が目立ちやすく審美性に欠けるほか、金属アレルギーのリスクも無視できません。また、保険診療はコストが抑えられる一方で、使用できる材料が限られてしまうため精密な型取りが難しく、それが最終的な詰め物のフィット感に影響を与える可能性があります。さらに、金属は温度や力によって膨張や収縮、変形を起こしやすく、これによって生じたすき間や段差に汚れがたまりやすいのもデメリットです。

編集部

以上の内容をふまえると、セラミックと金属はそれぞれどのようなケースに適していますか?

三瀬先生

個々の状況や優先事項によって最適な選択は異なるため、担当の歯科医師とよく相談し、自分に合った選択をすることが大切です。

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