「アスペルガー症候群の治療法」はご存知ですか?原因や症状についても解説!

「アスペルガー症候群の治療法」はご存知ですか?原因や症状についても解説!

幼少期に自覚症状はなかったにもかかわらず、大人になりアスペルガー症候群だったと判明するケースが近年増えてきています。ではアスペルガー症候群とは一体どのような症状があるのでしょうか。

本記事では、アスペルガー症候群の治療方法・原因・症状を解説します。コミュニケーションに何らかの違和感を覚えているという方は、ぜひ参考にしてください。

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監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

アスペルガー症候群の原因・症状

アスペルガー症候群の定義を教えてください。

コミュニケーション能力に特異性が認められ、知的障害を伴っていない症状はアスペルガー症候群とされます。 アスペルガー症候群と定義される大まかな条件は以下のとおりです。

言語能力と会話能力そのものに問題がない

他者とのコミュニケーション能力に特異性が確認される

社会的関係において障害が確認される

特定のものにこだわりがある

行動に反復性がある

上記のように定義はありますが、発見が遅れてしまったり判断することが難しかったりといった問題もあります。自閉スペクトラム症(ASD)に含まれる障害として分類されてはいますが、言語能力や会話能力には影響がありません。さらに、アスペルガー症候群の症状にもレベルがあります。特に幼少期の言葉の遅れは個人差や性格が影響するため、一概にアスペルガー症候群だと判断できないでしょう。しかし、何の問題もないと感じていたはずが、成人してからアスペルガー症候群だと発覚したケースも報告されています。

どのような原因で起こるのですか?

アスペルガー症候群を発症する原因はいまだ特定されていません。言葉が遅いのは親からの愛情表現が不足しているなどの話をよく耳にしますが、親の育て方はまったく原因には関係ないと留意しましょう。アスペルガー症候群は、生まれつきの遺伝的な要因や環境的な要因が複雑に絡まって起こる脳の機能障害ではないかと考えられています。環境的な要因とは、妊娠中の環境やトラブルなどを示唆しているものです。しかし環境的な要因に影響する事象はまったく解明されていません。

症状を教えてください。

症状はレベルの差も含めてさまざまです。具体的な症状は以下になります。

他者と感情や関心を共有するのが難しい

友だちができにくい

友だちがいても関わりが一方的

関心が1つの興味や事柄に限定される

騒音や匂いなどの感覚過敏あるいは鈍麻

言葉の遅れ

目が合わない・会話が成り立たないなどコミュニケーションを円滑にすることが難しい

こだわりが強いため柔軟に想像や思考することが難しい

自己流で物事を進めたがる

グループでの活動が苦手

伝えたいことを言葉にまとめることが難しい

人の話に関心を持てない

格式張った字義どおりの言語になる

コミュニケーションや社会性に影響する症状がほとんどで、集団の場で上記のような特性が起きる可能性がとても高くなります。一方、こだわりが強い傾向にあるため、昆虫や機械などの学問系で一目置かれるような博士タイプになる可能性も否定できません。障害と聞くとマイナスな面ばかりが目立ちますが、プラスな面もある個性といえるでしょう。

アスペルガー症候群と自閉スペクトラム症は同じですか?

自閉スペクトラム症はアスペルガー症候群・自閉症・広汎性発達障害をまとめて表現している総称です。自閉スペクトラム症は人口の約1%に及ぶとされ、約100人に1人と報告されています。性別では男性が女性の約4倍の発生頻度です。自閉スペクトラム症は症状やそのレベルも多様であり、個々のニーズに合った適切な療育と、状態を正しく理解した教育的支援につなげていく必要があります。

アスペルガー症候群の診断・治療方法

アスペルガー症候群はどのように診断されますか?

アスペルガー症候群の診断は、世界保健機構の診断基準であるICD-10やアメリカ精神医学会が定めたDSM-5の診断基準が用いられます。これらの診断基準をベースに、行われる検査の内容は以下のとおりです。

既往歴や症状などの問診

心理検査

知能検査

脳波検査

知能検査でてんかんの併存が疑われる場合に脳波検査が必要となることもあります。また、上記の検査から知的能力障害・神経発達症・精神疾患が発覚することがあります。もしアスペルガー症候群であった場合の診断名は、総称である自閉スペクトラム症が使用されるため留意ください。

大人でもアスペルガー症候群と診断されることはありますか?

アスペルガー症候群は成人期であっても診断されることはあります。2013年のアメリカ精神医学会が診断基準DSM-5を発表してから、成人期を迎えて診断を受ける患者さんは増加しています。幼少期にアスペルガー症候群と診断された患者さんと、成人期で診断された患者さんとでは生活の質(QOL)が異なるため注意が必要です。成人期にアスペルガー症候群の疑いがある場合には、主観的な生活の質について明らかにする検査が行われます。また本人だけでなく、親から幼少期の発達の歩みや過程を確認していくことも必要です。すべての自閉症状をもつ患者さんのうち約10%は就労・自立でき、さらにそのうちの少数がよい友人をもったり結婚して親になったりしています。しかし、精神疾患を患った際に軽度のアスペルガー症候群であったと発覚することもあるのです。大切なことは幼少期・成人期のどちらで診断を受けたかではなく、診断後にどのように自身と向き合って支援を受けながら生活の質を上げていくかになります。

アスペルガー症候群の治療方法を教えてください。

アスペルガー症候群の根本的な治療方法はいまだ解明されていません。ですが、個々の発達ペースに沿った療育や教育的な対応を支援することによって生活の質を安定させられます。かんしゃく・多動・こだわりなどの症状があまりにも強い場合は薬物療法を用いることもあります。また、負担やストレスが大きくなるとアスペルガー症候群の症状が悪化することもあるため注意が必要です。医師のアドバイスを受けて、患者さんの状態を正しく理解してそのニーズに合った適切な支援につなげていきましょう。支援には乳幼児期から始まる家庭療育や学校教育と就労支援があります。

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