監修歯科医師:
木下 裕貴(歯科医師)
北海道大学歯学部卒業。同大学病院にて研修医修了。札幌市内の歯科医院にて副院長・院長を経験。2023年より道内の医療法人の副理事長へ就任。専門はマウスピース矯正だが、一般歯科から歯列矯正・インプラントまで幅広い診療科目に対応できることが強み。『日本床矯正研究会』会員であり小児の矯正にも積極的に取り組んでいる。
根尖性歯周炎の概要
根尖性歯周炎は、根尖という歯の根っこの部分に炎症が起きる病気です。
炎症をきたすことで歯の根尖部に膿が溜まり、激しい痛みや歯肉の腫れ、歯茎から膿が出ることがあります。
根尖性歯周炎の原因となる細菌が他の組織に入り込むと、ほかのさまざまな病気につながることがあります。
副鼻腔の上顎洞(じょうがくどう)に侵入すると歯性上顎洞炎になり副鼻腔炎の症状が現れ、細菌が皮膚に入り込むと顔が赤く腫れ発熱することがある蜂窩織炎(ほうかしきえん)の原因となります。
飲み込む力(嚥下機能)が低下した高齢者や脳梗塞などの脳血管障害がある人では、誤嚥によって細菌が肺に侵入し、誤嚥性肺炎を引き起こす場合もあります。
細菌が血管に入り込んだ場合には敗血症や動脈硬化症、感染性心内膜炎などの危険な状態に陥る可能性があります。
根尖性歯周炎は自然治癒が難しいため、炎症の原因である歯の内部の感染原因を取り除く必要があります。
治療を行っても症状が改善されないときには抜歯が選択されることもあり、早期の発見が非常に重要です。
根尖性歯周炎の原因
根尖性歯周炎の主な原因はむし歯(う歯)や歯の治療における細菌の侵入です。
むし歯になった歯の表面は、細菌が放出する酸によって溶かされます。
治療せずに放置されると、根管という歯の根っこの管の部分まで細菌が侵入し、歯髄と呼ばれる歯の神経が含まれる部分に炎症(歯髄炎)が起こります。
歯髄炎をきたした歯は、神経が機能しなくなることで痛みの症状が消えることもありますが、炎症は進行している状態のため、根尖性歯周炎を引き起こす原因となります。
また転倒や交通事故、歯の食いしばりや歯ぎしりなどの生活習慣は、歯冠(歯の上側の部分)が割れる歯冠破折の原因となり、治療で歯の内部に細菌が入り込むことで、根尖性歯周炎をきたす場合もあり注意が必要です。
配信: Medical DOC