MRSA感染症の治療
MRSA腸炎の一番の原因であると考えられるディフィシル菌による腸炎の治療では、不要な抗菌薬は中止したうえで、ディフィシル菌に対して活性のある抗菌薬 (メトロニダゾールやバンコマイシン) を症状の経過をみながら投与していきます (参考文献 5) 。
MRSAに対してはバンコマイシンも効果があるため、MRSA腸炎の治療薬として使われていたバンコマイシンは、実際にはディフィシル腸炎の治療をしていたとしても矛盾しません。
MRSA感染症になりやすい人・予防の方法
MRSA腸炎として報告されていた患者の特徴は「手術後に抗菌薬投与をされている患者」というものでした。MRSA腸炎の原因の多くを占めていると思われるディフィシル腸炎のリスク因子にも抗菌薬の使用があり、その他には高齢であること、入院中であることが危険因子とされています (参考文献 5) 。
MRSA腸炎の一部を占めると考えられるトキシックショック症候群のリスク因子としては、タンポンの連続利用、手術や出産後の創部感染が有名です (参考文献 6) 。
これらのことから、何らかの背景があり入院している人、手術を受けて日が浅い人、手術創部が感染を起こしている人、抗菌薬投与中の人はMRSA腸炎とされていた疾患を発症するリスクが高いといえるでしょう。
上のようなリスクを背景に持つ場合に下痢症状や創部感染が出現したときは、担当スタッフに直ぐに知らせて「早期発見・重症化予防」をしましょう。
参考文献
1.皿谷健. “MRSA腸炎は存在するか”. 日本医事通信社 週刊日本医事新報 4754号 p52. 2015-6-6
2.岩田健太郎. “MRSA 腸炎はなぜ日本の外科病棟で流行し、消えていったのか”. m3.com シリーズ HEATUPP!たった5日で臨床の “質問力”が飛躍的に向上する、すごいレクチャー vol.9. 2021-8-16
3.Y Ogawa et al. Methicillin-resistant Staphylococcus aureus enterocolitis sequentially complicated with septic arthritis: a case report and review of the literature. BMC Res Notes. 2014;7:21
4.Iwata K et al. A systematic review for pursuing the presence of antibiotic associated enterocolitis caused by methicillin resistant Staphylococcus aureus. BMC Infect Dis. 2014; 14: 247
5.UpToDate. Clostridioides difficile infection in adults: Clinical manifestations and diagnosis
6.UpToDate. Staphylococcal toxic shock syndrome. Apr 19, 2022.
配信: Medical DOC
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