感染性心内膜炎の前兆や初期症状について
感染性心内膜炎の症状には大きく分けて①感染症としての非特異的な症状②心臓で感染がおこる凝ることによる心臓関連の症状③血管が詰まったり、破けて出血してしまうことによる症状の3つがあります (参考文献 1) 。
感染症としての非特異的な症状
体のだるさ、疲れやすさ、長引く発熱、寝汗が酷い、体重が減るといった症状が含まれます。発熱は特に出現頻度が高い症状です。
関節痛、筋肉痛といった整形外科的な症状を自覚する方もいます。
心臓関連の症状
「疣腫 (ゆうしゅ)」とよばれる、脆 (もろ) いイボのようなものが弁にできることによって、弁がしっかり閉まらなくなり、心臓の部屋の間での血液の逆流が起きることがあります。それによって心臓の血液を送り出す力が落ちることにより心不全症状 (息苦しい、咳が出る、身体がむくむ) といった症状が起こります。心臓の左側の部屋の弁で感染性心内膜炎が起こった患者さんのうち、約半数で心不全症状が現れるとされています (参考文献 2) 。
血管が詰まったり、破れることによる症状
軽いものでは、手のひらや足の裏に痛みのない赤い皮疹 (Janeway 疹) がや、手足の指の腹の痛みのある結節 (Osler斑) が 10% 程度の患者さんでみられます (参考文献 2) 。
病気が進行すると、心臓の血管が詰まることによる心筋梗塞やお腹の血管が詰まることによる腹痛といった、重要臓器に血液が行かなくなることによる症状があります。
このような重症塞栓症のなかでも、脳梗塞に代表されるような中枢神経での塞栓症が多くみられます (参考文献 2) 。脳の血管は詰まるだけではなく出血することもあり、脳出血やくも膜下出血は症例の 5~10% でみられるといわれています (参考文献 2) 。
また、中枢神経合併症がある症例では経過が比較的悪いことが知られています (参考文献 2) 。
色々な症状をみてきて「難しい!わからない!」と感じるかと思いますが、その症状の多様性から、医療者にとっても感染性心内膜炎の診断は難しいものとなっています。感染性心内膜炎は、検査をしていっても熱の原因がわからない、「不明熱」の代表的な原因疾患です。熱はほとんどの症例でみられますので、病院へ行っても原因がよくわからない熱が続く方で、上に紹介したような症状がある場合は、その旨を改めて担当の医師へ伝えてみてください。
感染性心内膜炎の検査・診断
感染性心内膜炎は、症状の経過や検査結果を総合して診断していきます。症状は先ほど紹介したのでこの項では検査を中心に紹介します。
まず、血液の中に原因となるような菌が菌いるかどうかを調べる「血液培養」が重要になります (参考文献 1, 2) 。通常、血液は無菌状態なので血液の中に細菌がいるか否か、どのような細菌がいるのかといった情報は、感染性心内膜炎の治療をする際に、どのような抗菌薬を使うかを決める際に重要になってきます。
画像検査として一般的なのは心臓のエコー検査です。エコー検査では心臓の中に本来ないはずの疣腫 (ゆうしゅ) や膿瘍 (膿がたまったもの) の有無、人工弁の構造異状、心臓の部屋の間で血液が逆流していないかどうか等を調べます (参考文献 2) 。エコー検査といえば身体にプローブとよばれる超音波を発する機械をあてて検査するものをイメージするかと思いますが、 エコーの機能が付いた胃カメラのようなものを飲み込んで、より心臓に近い場所から超音波をあてる経食道心エコーの方が診断制度が高いことが知られています (参考文献 2) 。
これらの検査結果と症状を総合的に考えて、診断基準を満たす場合に感染性心内膜炎と診断されます (参考文献 2) 。
配信: Medical DOC