感染性心内膜炎の治療
内科的な治療と外科的な治療に分かれます。
内科的な治療は抗菌薬が中心となります。血液培養の結果が分かる前に、可能性が高いと考えられる原因菌に効果がある抗菌薬を投与するエンピリック (経験的) 治療を始めた後、血液培養の結果をふまえて目の前の患者で悪さをしていると考えられる細菌を選択的に攻撃できる抗菌薬に変更します (参考文献 2) 。
基本的には内科的な治療が中心となりますが、抗菌薬治療の効果が思ったように得られないとき、合併症の進行で重篤な状態に陥った時などに外科的な治療をしなければいけない場合があります (参考文献 2) 。外科治療では細菌感染でダメージを受けた心臓の弁を人工のものに入れ替える人工弁置換術や、感染巣を取り除いたうえで自分の弁の形を整える弁形成術が行われます (参考文献 2) 。
感染性心内膜炎になりやすい人・予防の方法
感染性心内膜炎になりやすい人の特徴としては次のようなものが知られています (参考文献 2) 。
今までに感染性心内膜炎になったことがある人
何らかの心疾患で人工弁置換術を受けたことがある人
先天性心疾患のある人
いわゆる心臓弁膜症を有する人
閉塞性肥大型心筋症の人
ペースメーカーや植込み型除細動器のような「心臓の機械」を身体に入れている人
中心静脈カテーテルを長期間入れている人
虫歯や歯周病を有する人
皮膚疾患のある人 (特にアトピー性皮膚炎)
ステロイドの全身投与を受けている人
肺炎などの他の感染症がある人
感染性心内膜炎の予防方法については様々な議論がなされていますが、一定の結論を得られていないというのが現状です。歴史的には心疾患がある患者に対して歯科処置をした後に抗菌薬投与をしていたこともありましたが、普段から口のケアをしっかりすることの方が重要であり、今では感染性心内膜炎のハイリスクの患者さんに歯科処置の際にも、抗菌薬の予防投与を全例で行うようなことはありません。
感染性心内膜炎の原因菌の侵入経路としてはっきりしているものの中には、口腔内からの侵入の他に皮膚空の侵入があります。歯磨きをしっかりすることはもちろん、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を持っている方は、皮膚科で適切な治療を受けることが感染性心内膜炎の予防になるといえるでしょう。
参考文献
1.一般社団法人 日本感染症学会. “感染性心内膜炎” 症状からアプローチする インバウンド感染症への対応 感染症クイック・リファレンス. 2023-04-19
2.日本循環器学会. 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン 2017改訂版. (2018)
配信: Medical DOC
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