糖尿病の治療では、常に血糖値が安定した状態を保つ必要があります。そのためには、一般的におこなわれているカロリー制限よりも糖質制限の方が有用です。しかし、糖質を制限する食事には、メリットもあればデメリットもあります。糖質制限の実態と注意点について、「吉田内科クリニック」の吉田先生に教えていただきました。
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監修医師:
吉田 光範(吉田内科クリニック)
京都府立医科大学卒業。その後、京都市立病院放射線科、明石市立市民病院消化器内科、兵庫県立尼崎病院(現・尼崎総合医療センター )内科・東洋医学科医長、兵庫県立東洋医学研究所医長、米国ペンシルベニア大学ウイスター研究所研究員で経験を積む。1992年、兵庫県芦屋市に「吉田内科クリニック」を開院。日本内科学会認定内科医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医学放射線学会放射線診断専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。
糖質制限とは?
編集部
糖尿病の治療で「糖質制限」という方法があると聞きました。どのようなものですか?
吉田先生
「炭水化物(糖質+食物繊維)」「脂肪」「タンパク質」を三大栄養素と言い、その中で炭水化物(糖質)を制限することが糖質制限です。ちなみに、糖質=糖類ではありません。糖質制限は、糖尿病の治療として有効と考えられているだけでなく、減量や体質改善にも効果が期待できるとされています。
編集部
具体的に、どのようにしておこなうのですか?
吉田先生
米類、小麦粉類(パン、パスタ、うどんなど)、いも類、くだもの、甘いものを控えていただきます。ただし、肉類、魚介類、卵、チーズなどの乳製品、大豆製品、オイル、バターなど、糖質が少なく脂質やタンパク質の多いものは食べることができます。
編集部
なぜ、糖質を制限する必要があるのですか?
吉田先生
糖尿病とは、血糖値が急激に高くなることを言いますが、三大栄養素のうち、血糖値をすぐに上げるのは主に糖質だけだからです。食事後は健康な人でも血糖値が上がりますが、インスリンの働きにより徐々に低下していきます。しかし、糖尿病の人はインスリンの効きが悪くなったり、そもそもインスリンの分泌量が低下したりすることで、食後血糖値がなかなか下がらなくなります。そうした事態を避けるため、血糖値を上昇させる働きの強い糖質の摂取を制限し、血糖値を上げないようにしようというのが糖質制限の目的です。
糖質制限にはどのようなメリットがあるのか?
編集部
糖質制限には血糖値を上昇させないことのほか、どのようなメリットがあるのですか?
吉田先生
糖質の摂取を制限すると、インスリンの分泌量が少なくなります。インスリンには脂肪を体内に溜め込む働きがあるため、この分泌量が少なくなれば、脂肪が体内に蓄積されにくくなります。その結果、短時間で体脂肪が減り減量効果が現れやすいのです。
編集部
そのほかに、どのようなメリットがありますか?
吉田先生
糖質の摂取を制限するだけなので、比較的簡単におこなえるというメリットがあります。複雑なカロリー計算や知識は不要です。また、糖質の摂取は制限しますが、脂質やタンパク質はたくさん摂っても大丈夫なので十分満腹感を得られるというメリットもあります。
編集部
お酒を飲むことはできるのですか?
吉田先生
糖質を多く含むビールや日本酒などは控える必要がありますが、糖質が比較的少ないウイスキー、ブランデー、焼酎などの蒸留酒は飲むことができます。ワインを飲むなら、糖質が少ない赤ワインがおすすめです。
編集部
メリットがたくさんある食事療法なのですね。
吉田先生
そうですね。糖尿病以外にも高血圧や脂質異常症、逆流性食道炎、アレルギー性疾患、うつ、不眠、冷え性などにも効果が期待できることが研究により明らかになっています。
配信: Medical DOC