最新技術とAI活用の可能性とは
編集部
近年の臨床現場において、技術的な面での画期的な変化はありますか?
大杉先生
世界的に注目されている技術の1つに「インスリンポンプ」があります。これは、毎日の注射が不要で、持続的にインスリンを注入できる技術です。また連続血糖測定(CGM)システムと連携させることで、アプリケーションを通じてインスリンの注入量を自動的に調整してくれます。患者さんの血糖値の変動を2週間ほど記録し、そのデータを基にインスリン量を補正してくれる機能があります。
編集部
インスリンポンプや連続血糖測定(CGM)システムに今後期待する点はどのようなことでしょうか?
大杉先生
食事による血糖値の変動は、患者さん自身の食事内容や量を基に手動で調整する必要があるため、現時点では完全な自動化には至っていません。しかし、CGMとインスリンポンプの技術が進化したことで「人工膵臓」と呼ばれるほど、血糖コントロールが劇的に改善されつつあります。これは、今後のインスリン治療の未来像を示していると考えています。
編集部
リモートでのモニタリングは、糖尿病患者の生活習慣改善にどのように役立つと考えられますか?
大杉先生
CGMの導入により、治療薬だけでなく生活習慣が血糖値にどう影響しているかを目に見える形で把握できるようになりました。例えば、食べたものや運動した内容が血糖値の変動にどう影響するかが分かるため、患者さんは「食事内容や体の動かし方によっては血糖値が上がる・下がるかもしれない」と日常生活で意識するようになります。また、医療者と患者さんが共通のデータを見ながらコミュニケーションを取れるため、生活習慣の改善や薬の調整について、より効果的なアドバイスを提供できるようになりました。
編集部
AI(人工知能)を活用した糖尿病管理システムは期待される効果について教えてください。
大杉先生
将来的には、患者さんと伴走してくれるようなデバイスができれば理想的だと考えています。例えば、1週間ほど装着するだけでAIが生活習慣を分析し、「あなたの生活はこういった傾向がありますよ」とフィードバックをくれる技術や、体調が悪い時にデバイスを数日つけると、AIが体調の変化を察知してくれるようなシステムができればと期待しています。
編集部まとめ
糖尿病治療は、AIやリモートモニタリングなどの最新技術やデータを活用して大きく進化しています。インスリンポンプや連続血糖測定(CGM)による自動化が進み、患者さん自身が血糖値の変動を把握しやすくなっています。さらに、リアルワールドデータの活用により、より実践的で患者さんの日常生活に寄り添った治療が可能になると期待されているようです。本稿が糖尿病治療への理解を深める一助となれば幸いです。
配信: Medical DOC
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