亜鉛欠乏症の治療
食事療法:血清亜鉛値が低下している場合、まずは亜鉛含有量の多い食品を積極的に摂取するよう推奨します (参考文献2) (「亜鉛欠乏症になりやすい人・予防の方法」を参照 )。 しかし食事療法だけでは改善しないこともあり、亜鉛欠乏症の症状が見られる場合には亜鉛補充療法が必要となることも多いです。
亜鉛補充療法:亜鉛欠乏症の診断基準を満たした場合、亜鉛補充療法の適応になります (参考文献2)。亜鉛補充療法のリスクは少ないですが、消化器症状 (嘔気、腹痛)、血清膵酵素 (アミラーゼ、リパーゼ)上昇はよく見られる副作用です。ただこれらの症状はいずれも軽度で、服薬中止に至ることはほとんどありません。
亜鉛欠乏症になりやすい人・予防の方法
慢性肝疾患、糖尿病、慢性炎症性腸疾患、慢性腎臓病では、しばしば血清亜鉛値が低値であることが知られています (参考文献3)。これら疾患では、血清亜鉛値が低値の場合、亜鉛欠乏症状が認められなくても、亜鉛補充を考慮してもよいとされています。
・慢性肝疾患: 肝硬変への進行とともに血清亜鉛値の低下が認められました。
・糖尿病: 糖尿病患者に対し亜鉛を投与したところ、空腹時および食後血糖、インスリン分泌能の改善を認めました。
・慢性炎症性腸疾患: クローン病、潰瘍性大腸炎患者に対し亜鉛を投与したところ、免疫に関与する血中サイムリン値の増加、NK 細胞活性の低下、腸管透過性の正常化が見られました。
慢性腎臓病:腎不全、透析患者に対し、亜鉛50mg/日を投与し、血清亜鉛値の増加、栄養不良の改善、血清ホモシステイン値の有意な減少がみられました。
予防の方法としては食事療法および亜鉛製剤が挙げられます。亜鉛は肉・魚介・種実・穀類など多くの食品に含まれています。 特に多いものとしては牡蠣、あわび、かに、するめ、豚レバー、牛肉、卵、チーズ、高野豆腐、納豆、えんどう豆、切干大根、アーモンド、落花生などが挙げられます。偏食や極端なダイエットを避け、一汁三菜に近い食事を摂ると、亜鉛は十分量摂取できます。
参考文献
1.UpTo Date. Overview of dietary trace elements.
2.食品安全委員会. 亜鉛.
3.日本臨床栄養学会. 亜鉛欠乏症の診療指針2018.
配信: Medical DOC
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