高安動脈炎の前兆や初期症状について
高安動脈炎は急激にではないものの徐々に発症・進行する「亜急性」の経過をたどるとされています (参考文献 2)。血管炎という名前がついていますが、初期の症状では動脈の症状が察知されない場合も多く、診断に時間がかかることがあるのが現状です (参考文献 2)。
高安動脈炎の初期症状としては、非特異的な全身症状、具体的には体重減少や発熱、倦怠感が見られることが多く、関節痛も約半数の方に見られます (参考文献 2)。
高安動脈炎における動脈症状には次のようなものがあります (参考文献 2)。
頸動脈痛
首の両側に頸動脈というものがありますが、ここで炎症が起こることにより頸動脈痛が出ることがあります
末梢の脈拍が触れなかったり、弱くなる
高安動脈炎は「脈なし病」と呼ばれていたこともありました (参考文献 1)。手首にある橈骨動脈の触れやすさが左右で異なるなどの症状が出ることがあります。
左右の腕で血圧が 10 mmHg 以上違う
高血圧
腎臓の動脈が影響を受けることにより高血圧を発症することがあります。
狭心症
心臓を栄養する動脈も高安動脈炎のターゲットになることがあります
消化器症状
腸を栄養する動脈が障害されることにより食後の腹痛や下痢、消化管出血が現れることがあります
呼吸器症状
呼吸困難や喀血が自覚症状として出る方がいます
神経症状
頸動脈や椎骨動脈といった脳に血液を送る血管は大動脈から直接分岐しており、高安動脈炎のターゲットになりやすいです。脳の血流が少なくなればふらつきやめまい、頭痛、失神といった症状が出ることがあります。
目の見えにくさ
「奇異なる網膜中心血管の変化の1例」という高安右人の症例報告 (1908年) が高安病の最初の報告でした (参考文献 1)。
「高安動脈炎かもしれない」とご自身で疑うことは難しいと思いますから、日頃何か気になる症状があれば対応する科を受診してください。
高安動脈炎の検査・診断
身体診察では次のような項目に注意して所見の有無をチェックします (参考文献 2)。
四肢全てで血圧を測定する
四肢に血液を送る動脈が障害されていれば、四肢の血圧測定結果が正常とは異なる場合があります。左右の腕で大きく測定値が変わったり、足の血圧が腕より明らかに低くなるなどが高安動脈炎のサインです。
聴診器で血管の雑音の有無を確認する
障害されている動脈は、血液の通り道が狭くなることにより雑音が聴取されることがあります。
動脈の圧痛の有無を確認する
その他にも血液検査で炎症に関連するマーカーを測定したり、画像検査で詳しい動脈の評価をして、総合的な判断をします (参考文献 2)
参考までに、米国リウマチ学会による高安動脈炎の診断基準は次のようになっており (参考文献 1, 2)、6つの項目のうち3項目を満たす場合に高安動脈炎と診断されます。
発症年齢≤40歳
四肢の跛行 (痛み)
片方または両方の上腕動脈の脈動の低下
両腕の収縮期血圧に少なくとも10mmHgの差がある
片方または両方の鎖骨下動脈または腹部大動脈上の血管雑音
動脈硬化症、線維筋性異形成症、またはその他の原因によるものではない、大動脈全体、その主要枝、または上肢または下肢近位部の大動脈の動脈造影上の狭窄または閉塞
配信: Medical DOC