「ニューモシスチス肺炎」になりやすい人の特徴はご存知ですか? 原因・症状を併せて医師が解説

「ニューモシスチス肺炎」になりやすい人の特徴はご存知ですか? 原因・症状を併せて医師が解説

ニューモシスチス肺炎の前兆や初期症状について

PCP の初期症状は徐々に現れることが多く、比較的非特異的です。
風邪や軽い呼吸器感染症と類似しており、痰のほとんど出ない乾いた咳、発熱、体動時に悪化する息切れなどです。
疲労感や全身の倦怠感もみられることがあります。
呼吸困難が進行するにつれて、酸素不足に低酸素症やチアノーゼ(血液中の酸素不足で肌が青紫色になる状態)も見られます。

また、HIV患者では数週間から1〜2ヶ月かけて進行することが一般的です。
一方、がんなどの免疫不全患者ではより急速に進行し、数日から1週間で悪化することがあるため注意が必要です。

ニューモシスチス肺炎の検査・診断

PCPの検査は、画像診断や血液検査が有用で、確定診断には遺伝子検査や塗抹検査が行われます。

CT検査

CT検査によって撮影された画像では、すりガラス状の陰影がPCPの特徴的な所見として現れます。
両側の肺に見られることもPCPの可能性を示唆します。

血液検査

血液検査では、β-Dグルカン値が上昇している場合、PCPの診断に役立ちます。
β-Dグルカンは真菌感染のマーカーであり、PCP患者では高い値を示すことが多く、特にHIV感染者では陽性率が高い傾向です。
さらに、LDH(乳酸脱水素酵素)値やKL-6(肺の炎症マーカー)値もPCP患者で上昇することが多く、PCPの診断を補助します。

PCR検査

PCR検査は、PCPの確定診断を行うための重要な方法です。
患者から採取された喀痰や気管支肺胞洗浄液(気管支鏡を使用して肺の奥にある気管支や肺胞に生理食塩水を注入し、その液を吸引して回収したもの)を使用します。
喀痰や気管支肺胞洗浄液の中からPCPの原因菌であるPneumocystis jiroveciiの遺伝子を増幅し、検出します。
特に、気管支鏡を使って気管から採取した検体を用いることで、より正確に病原体を特定することが可能です。

遺伝子検査(LAMP法など)

遺伝子検査の一種であるLAMP法は、PCRと同様に遺伝子を増幅して病原体を検出します。LAMP法は、PCRと比べて簡易でありながら、感度が非常に高いことが特徴です。

ただし、少しでも汚染があると病原体がいないのに陽性の結果が出てしまう「偽陽性」の危険性があるため、他の検査方法と組み合わせて使用することが推奨されています。

塗抹検査(Diff-Quik染色など)

塗抹検査は、PCPの診断において病原体を顕微鏡で直接確認するために使用される手法です。
喀痰や気管支肺胞洗浄液をガラススライドに塗布し、Diff-Quik染色などの特別な染色液で染めた後、顕微鏡で観察します。
染色によって、PCPの原因菌であるPneumocystis jiroveciiのシスト(休眠状態の胞子)や栄養体(活動状態の細胞)を確認することが可能です。
ただし、塗抹検査の感度はやや低いため、他の検査と組み合わせて使用されることが多く、補助的な検査として位置づけられています。

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