ニューモシスチス肺炎の治療
PCPの治療には、抗ニューモシスチス薬(抗生物質)であるST合剤(トリメトプリム・スルファメトキサゾール:TMP-SMX)が最も一般的です。
ST合剤は、病原体の増殖を抑える効果があり、3週間程度の治療が必要となります。
参考:国立研究開発法人 国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開発センター/ニューモシスチス肺炎(PCP)
スルファメトキサゾールに対するアレルギーや、腎機能低下、骨髄抑制があってST合剤が使用できない場合はペンタミジンやアトバコンなどが代替として処方されます。
ペンタミジンは、真菌や原虫に対する抗感染薬で、PCPの治療に有効です。
アトバコンは病原体であるPneumocystis jiroveciiのエネルギー生成を阻害し、細胞の機能を停止させることで感染を抑えます。
重症の場合には、対処療法として酸素療法やステロイド剤の使用も検討されます。
ニューモシスチス肺炎になりやすい人・予防の方法
PCP にかかりやすい人は、免疫抑制状態にある人々です。
特にHIV陽性者や臓器移植を受けた患者、化学療法を受けているがん患者が挙げられます。
予防としては、免疫抑制剤を使用している以下の条件を満たす患者には予防薬(ST合剤)を定期的に服用することが推奨されます。
50歳以上である
プレドニゾロン換算で1.2mg/kg/日以上の投与を受けている
免疫抑制剤を併用し、プレドニゾロン換算で0.8mg/kg/日以上の投与を受けている
リンパ球数が500/μL以下である
参考:厚生労働省スルファメトキサゾール・トリメトプリムニューモシスチス肺炎の予防及び治療
参考:二ューモシスチス肺炎の予防基準の有用性に関する検討/日本臨床免疫学会会誌/32 巻 (2009) 4号/ p. 256-262
また、予防投与基準を満たさない場合でも、複数の危険因子が存在する場合には予防投与が検討されます。
関連する病気
AIDS/HIV感染
がん
臓器移植
サイトメガロウイルス感染症
COVID-19
参考文献
国立研究開発法人 国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開発センター/ニューモシスチス肺炎(PCP)
II. 注目の疾患/3. ニューモシスチス肺炎Pneumocystis jiroveci/日本内科学会雑誌/95 巻 (2006) 6 号/p.1019-1024
ニューモシスチス肺炎(Pneumocystis pneumonia;PCP)の診断における遺伝子検査,塗抹検査,血清学的検査の比較検討/医学検査/68 巻 (2019) 3 号/ p.437-442
発熱,呼吸困難にて救急搬送となり,COVID -19 肺炎との鑑別が問題となったニューモシスチス肺炎の 1 例/日本病院総合診療医学会雑誌/17 巻 (2021) 5 号/p.575-577
二ューモシスチス肺炎の予防基準の有用性に関する検討/日本臨床免疫学会会誌/32 巻 (2009) 4号/ p. 256-262
気胸を呈したAIDS合併ニューモシスチス肺炎の一例/日本病院総合診療医学会雑誌/4 巻 (2013) 2 号/p. 45-49
悪性リンパ腫患者におけるニューモシスチス肺炎予防に対するST合剤投与開始時期の検討/医療薬学/39 巻 (2013) 8 号/p. 465-470
肺癌患者におけるニューモシスチス肺炎の臨床的検討/肺癌/49 巻 (2009) 3 号/p. 241-247
肺移植周術期の感染症/移植/53 巻 (2018) 4-5 号/p. 277-282
配信: Medical DOC
関連記事: