猫ひっかき病の前兆や初期症状について
猫ひっかき病の主な症状は、丘疹(きゅうしん)やリンパ節腫大、発熱、全身倦怠感、頭痛です。
重症例では、肝臓や脾臓の肉芽腫、消化器症状、脳症、眼科症状などが起こることもあります。
丘疹
初期症状として3〜10日で傷口の周りに丘疹(小さな赤いぶつぶつ)ができます。
丘疹は水ぶくれや化膿、潰瘍になることもあります。
リンパ節腫大
初期症状が発生した1〜2週間後には、体内のリンパ節に腫脹が起きて痛みがでます。
腫脹したリンパ節は、特に脇の下、肘のあたり、首やあごの下などにできやすく、化膿する可能性もあります。
発熱
発熱は断続的に続くケースが多く、特に午後や夜間に高熱が出やすいです。
患者によっては1〜2週間程度、発熱が続くこともあります。
倦怠感
倦怠感は猫ひっかき病の患者が頻繁に訴える症状で、感染による体力の消耗や免疫力の低下によって引き起こされます。
体全体がだるく感じ、普段よりも疲れやすくなることが特徴です。
発熱が続くと、さらに倦怠感が強まることがあります。
頭痛
猫ひっかき病による頭痛では、軽度から中等度の痛みが続くことがあります。
頭痛は発熱と共に起こることが多く、特にリンパ節が腫れている部位(首や顎の下など)に痛みがある場合は強く感じられます。
肝脾機能障害、消化器症状
肝臓脾臓型猫ひっかき病は、まれに起こる猫ひっかき病の非典型例です。
主な症状としては、肝臓や脾臓の肉芽腫形成のほかに、持続的な発熱、倦怠感、腹痛が伴います。
発熱や全身の倦怠感に伴い、下痢や食欲不振などの消化器症状も見られることがあり、体重減少や体力低下が進行します。
脳症
猫ひっかき病のまれな合併症として、脳症が発生することがあります。
脳症はリンパ節腫大が見られてから1〜6週間後に発症することが多く、痙攣発作、意識障害、精神錯乱、昏睡などが起こりやすいのが特徴です。
急性期には項部硬直や腱反射の異常、筋力低下も見られることがあります。
視神経網膜炎やぶどう膜炎
猫ひっかき病による眼科症状として、視神経網膜炎やぶどう膜炎が見られることがあります。
視神経網膜炎やぶどう膜炎は、目の奥の視神経が腫れる視神経乳頭浮腫や網膜剥離の原因になりやすく、視力低下や中心視野の欠損が発生する可能性があります。
治療が遅れると、網膜の機能が損なわれ、回復が遅れたり失明したりする危険性があるため、早期の診断と治療が重要です。
猫ひっかき病の検査・診断
猫ひっかき病の診断には問診が重要です。
猫との接触歴や、ひっかかれた、噛まれたなどの事実があるか確認し、Carithers基準に当てはまるか確認します。
発熱や倦怠感なども確認し、身体検査でリンパ節の腫れや皮膚の傷跡を確かめることも大切です。
問診以外にも血液検査や画像診断、生検を行い、猫ひっかき病の診断を行います。
Carithers基準
猫ひっかき病の診断方法としてCarithers基準があり、項目は以下の通りです。
猫との接触(2点)
局所リンパ節の腫れ(1点)
ひっかき傷などの創傷部の確認(2点)
特異的な皮膚反応検査(2点)
皮膚反応検査では皮膚に特定の抗原を注射し、アレルギー反応のように皮膚に腫れや赤みが出るかを確認する検査です。
合計5点以上で猫ひっかき病が疑われ、7点で確定診断となります。
参考:肝臓脾臓型猫ひっかき病の1例/日本消化器病学会雑誌/第120巻(2023)第2号/p.190-198
血液検査
猫ひっかき病の血液検査では、患者の血清を採取して、バルトネラ菌に対するIgG抗体やIgM抗体の存在を確認する間接蛍光抗体法を行います。
血液に猫ひっかき病に関連する物質が含まれている場合、蛍光顕微鏡で確認すると光っている所見が見つかります。
IgG抗体やIgM抗体についても確かめることで、急性の感染なのか判断できます。
画像検査
CTやMRIによる画像診断では、リンパ節の腫大や、炎症や浮腫の広がりが観察できます。
リンパ節内の不整形や三日月形の低濃度領域(グレーに映って見える)が見られるのが特徴です。
生検(組織検査)
猫ひっかき病では、腫脹しているリンパ節に対して生検が行われます。
小膿瘍が中心となった肉芽腫性リンパ節炎(リンパ節にできる炎症で、細胞が集まって固まりを作る病気)の所見が確認できるのが猫ひっかき病の特徴です。
肝臓や脾臓の生検でも、類上皮細胞肉芽腫(体を守る細胞が集まり、固まりを作る病変)が見つかることがあり、診断に役立ちます。
配信: Medical DOC