肩腱板損傷の治療
肩腱板損傷では主に以下4つの治療をおこないます。
安静
薬物療法
理学療法
手術
安静
肩の痛みが強い場合には安静が有効です。特に転倒やスポーツなどの強い外力が加わって肩腱板損傷を起こしたり、夜間痛がみられるほど症状が強かったりする場合は、安静によって炎症を抑えることが大切です。肩を動かすことをできるだけ控えるだけでなく、必要に応じて三角巾で肩を固定することも効果があります。
薬物療法
薬物療法では注射や内服で痛みの軽減を図ります。夜間痛があり炎症反応が強い場合にはステロイド注射が効果的です。しかし糖尿病などステロイドが使用できない場合には局所麻酔薬が選択されます。炎症があまり強くない場合では、肩の動きを滑らかにするヒアルロン酸注射を検討することもあります。
内服薬では非ステロイド性消炎鎮痛薬で痛みの軽減を図ります。そのほか、湿布などの外用薬も有効です。
理学療法
理学療法では運動療法によって損傷した回旋腱板の機能回復を図ります。連続性が保たれている回旋腱板の筋力強化運動を繰り返すことで、痛みの軽減が期待できます。肩関節の可動域が狭くなっている場合では、可動域を広げる運動・ストレッチをおこないます。
運動療法以外に温熱や電気機器を利用した物理療法も効果的です。物理療法による回旋腱板への血流を促進することは、組織の修復や痛みを緩和させる効果があります。
手術
薬物療法や理学療法などの保存療法でも痛みが軽減できないケースでは、手術による腱板の修復を検討します。特に若年者のスポーツや転倒などの外力による肩腱板損傷では、損傷の範囲が大きいことも多いため、手術が検討されるケースが多いです。
損傷が軽度である場合では低侵襲である内視鏡での手術をおこなうため、術後の痛みが軽く社会復帰も比較的早くできます。しかし損傷の程度が大きい場合には肩を大きく切開して手術するケースもあります。その場合は、術後の痛みや社会復帰までの期間が長引く可能性があります。
肩腱板損傷になりやすい人・予防の方法
腱板損傷になりやすい人は、スポーツや仕事などで頭の上に腕を挙げる動作が日常的に多い人です。腕を頭の上に挙げると回旋腱板が上腕骨と肩峰に挟まれるため、回旋腱板のすり減りが起きやすく損傷するリスクが高まります。頭上に重たい物を繰り返し持ち上げる仕事や、野球やテニスをする人は特に注意が必要です。加齢によって回旋腱板の筋肉が萎縮することも、肩腱板損傷のリスクが高まりやすくなります。
肩腱板損傷の予防は回旋腱板を鍛えることです。チューブや軽いダンベルを使った腱板の筋力強化は腱板のすり減りを防ぐ効果が期待できます。肩関節や肩甲骨周囲の筋肉のストレッチも重要です。筋肉の柔軟性が高くなれば上腕骨や肩甲骨の動きが滑らかになり、挙上時の回旋腱板の挟み込みが少なくなるため、損傷するリスクが軽減されます。
関連する病気
肩腱板断裂
肩関節周囲炎
インピンジメント症候群
参考文献
日本整形外科学会肩腱板断裂
今田岳男 et al 腱板損傷の発生要因に関する解剖学的検討 肩関節23巻 第3号 1999
井樋栄二, 津村弘 et al 標準整形外科学第15版 医学書院 2023
配信: Medical DOC
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