「白内障手術を受けると、視力が改善するだけでなく、認知機能にも良い影響がある」という研究結果が注目を集めています。視覚の回復が脳の働きに影響を与えるということなのでしょうか? そこで白内障やその治療法、白内障手術と認知機能について調べた研究結果などについて、川口前川眼科クリニック蕨院の林 雄介先生に解説してもらいました。
監修医師:
林 雄介(川口前川眼科クリニック蕨院)
順天堂大学医学部卒業後、順天堂大学医学部眼科学講座に入局し、順天堂大学医学部附属練馬病院や順天堂大学医学部附属静岡病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院において研鑽を積んだのち、2022年より順天堂大学医学部附属順天堂医院眼科・緑内障白内障 グループ長となる。2023年9月、川口前川に川口前川眼科クリニック蕨院を開院、院長となる。日本眼科学会専門医、眼科PDT研究会認定医、水晶体嚢拡張リング(CTR)使用認定医。
白内障って?医師が解説!
編集部
白内障について教えてください。
林先生
白内障とは目の奥でカメラのレンズのような働きをしている「水晶体」が、白く濁ってしまう疾患のことです。水晶体は、本来はほぼ透明ですが、加齢とともに濁り、80歳代になるとほとんどの方に白内障が認められると言われています。
編集部
白内障になると、見え方にも影響が出るのですか?
林先生
そうですね。水晶体が濁ると、屈折度数が変化したり、光の散乱が起こったりするようになるため、視界のかすみ・ぼやけ、眩しく感じる、視力低下などの症状が出ます。
編集部
それは困りますね。
林先生
そう思いますよね。しかし、これらの症状は、本人も気が付かないほどごく軽度なところからはじまり、ゆっくりゆっくり進行するため、ある程度まで進んでも本人が全く気づいていない場合も多くあるのです。
編集部
では、どうやって気づけばいいのですか?
林先生
50歳以降くらいから、特に自覚症状がなくても、定期的に視力検査を受けることをお勧めします。そこで視力低下や見えにくさがあれば、前眼部診察や眼底検査などの精密検査を行い、これらの検査結果を踏まえた上で、白内障と診断されます。
白内障の治療にはどんなものがある?
編集部
白内障にはどんな治療法がありますか?
林先生
ごく初期であれば、点眼薬で様子をみることもありますが、あくまでも進行予防を目的とした対症療法なので、濁った水晶体が元に戻るわけではありません。症状を改善させる治療は手術加療のみとなります。行うのは濁った水晶体の代わりに、人工の眼内レンズを挿入する手術で、多くの場合日帰り手術が可能です。
編集部
どのような手術か、もう少し詳しく教えてもらえますか?
林先生
水晶体の周りにある「水晶体嚢」を切開し、濁った水晶体を超音波で乳化吸引して取り除きます。その後、新しい人工の眼内レンズを挿入します。手術自体は通常10~15分ほどで完了しますが、白内障の進行具合や目の状態によっては、もう少し時間がかかることもあります。
編集部
手術で痛みはないのですか?
林先生
手術前には点眼麻酔を行うため、手術中に強い痛みを伴うことはありません。傷口も非常に小さく目立たないですし、眼内レンズは一度挿入すると、一生使い続けることが可能です。
配信: Medical DOC