陥没乳頭の治療
保存的療法
仮性陥没乳頭、扁平乳頭、まだ胸の発達段階が若い女性は、保存療法が第一選択になります。
授乳を希望する妊娠中の女性は、妊娠5,6ヶ月程度よりマッサージなどを行うことが効果的な場合があります。
乳頭マッサージ(ホフマン法)
両方の親指で乳輪のあたりを圧迫しながら、乳輪から離れるように引っ張ります。
これを垂直方向、斜め45度の方向にも行います。
乳頭を弱く引っ張り出す方法も有効です。
乳頭吸引法
スポイト、乳頭吸引器などの器具を使い、陰圧をかけることで乳頭を引っ張り出します。
ただし、妊娠8ヶ月から分娩までの乳頭への刺激は、子宮収縮を起こす可能性があるため避けたほうがいいとされています。
妊娠すると乳腺、乳頭も発達し、伸展性が増すため陥没乳頭が引き出されやすくなります。
手術療法
保存的療法で改善されない場合や重度の場合は、手術療法を行います。
乳頭を突出させ形態を良くし、再陥没しないようにすることが主な目的になります。
手術法としては、以下の流れになります。
①短縮している乳管周囲の組織を剥離し乳管を伸ばす
②陥没している乳頭を引き上げる
③乳頭を挙上した状態に固定する
術式は乳頭の状態や重症度によって個別に相談して決定します。
乳頭部を切開し乳管を傷めないように配慮しながら陥没の原因となっている索状物などを除去し、乳頭を引き出した状態で縫合します。
ただし、今後授乳を希望する女性が手術療法を行う場合、以下のことについては慎重に検討する必要があります。
手術を行わない場合
陥没乳頭は乳児にとって乳頭に舌を絡ませることが難しく、乳頭痛や乳頭損傷を起こしやすいです。
また、乳管がつまりやすく乳腺炎を起こしやすい問題があります。
しかし、授乳では正しい授乳姿勢をとることと、乳児へ乳頭を含ませる方法を適切に行うことが最も有益なケアとして実証されています。
乳児が吸うのは乳頭ではなく乳房であるため、乳児が乳房を日々吸うことを繰り返せば、乳頭・乳輪の伸展性は徐々に向上していきます。
乳児が吸うことは、マッサージやスポイトを使用することと比べれば最も有効な方法なのです。
手術を行う場合
重症例では、修正が困難な場合が多く、再陥没の可能性が高いということが問題となります。
再陥没を防ぐために乳頭を引き出し、無理やり乳頭の首を縛ってしまうと、乳頭が壊死してしまうという重大な合併症があります。
また、乳管を切断すれば修正が容易になりますが、授乳機能が消失してしまうということが大きな問題点となります。
乳管を十分に剥離して引き出す方法では授乳機能が温存できますが、重症例では、術後2〜3週間でまたもとに戻ってしまう例もあるようです。
術後は、再陥凹の予防のためにニップルシールド(乳頭保護器)やガーゼ、パッドなどによる保護を行います。
再陥凹の予防の保護を続けていても、傷の感染や元々の陥没の程度によっては元に近い状態に戻ってしまうことがあります。
重症度や授乳希望などを検討し、形成外科医と十分に相談した上で治療方法を決定する必要があります。
陥没乳頭になりやすい人・予防の方法
陥没乳頭自体を予防をすることはできません。
汚れが溜まりやすいため、感染が起こりやすいことを知っておきましょう。
乳がんなどの乳房の疾患から後天的に起こった場合には、乳頭からの分泌物、しこり、痛みなどの異常がないか日々セルフチェックを行います。
気になる症状がある場合は早めに受診し、疾患を鑑別し発見することが重要となります。
参考文献
日本形成外科学会 陥没乳頭
乳房の形成外科
日本医科大学 武蔵小杉病院 陥没乳頭の手術
NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会 母乳育児支援スタンダード
UNICEF/WHO赤ちゃんとお母さんにやさしい母乳育児支援ガイド
配信: Medical DOC
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