監修医師:
高宮 新之介(医師)
昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器外科を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院生理学講座生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。
大動脈解離の概要
大動脈解離は、心臓から全身に血液を送る大動脈の壁が裂けてしまう重大な疾患です。
大動脈は、体内で最も大きな動脈であり、心臓から血液を送り出す重要な役割を果たしています。
この大動脈の壁は、内膜、中膜、外膜の三層構造になっています。
通常、これらの層は互いに密接に結びついており、丈夫な構造を形成しています。
しかし、何らかの原因で内膜に亀裂が入ると、そこから血液が中膜に流れ込み、中膜と外膜の間に新しい血流の道「偽腔」が形成されます。
この偽腔の拡大によって大動脈の壁が引き裂かれ、場合によっては外膜が破裂することがあります。
中高年の男性に多く見られ、特に50歳から70歳の間に発症することが多いとされています。
しかし、高血圧や動脈硬化、遺伝的な要因がある場合には、若年層でも発症するリスクがあります。
近年では、画像診断技術の進歩により、早期に診断がつくことが増えていますが、発症初期の症状が非特異的であるため、見逃されるケースも少なくありません。
大動脈解離の原因
大動脈解離の原因として最も多いのは、高血圧です。
高血圧は、大動脈の壁に常に強い圧力をかけるため、内膜が損傷しやすくなります。
特に、長年にわたって高血圧が続くと、動脈の壁に負担が蓄積し、脆弱になる可能性があります。
その結果、急激な血圧の上昇やストレスが引き金となり、内膜に亀裂が生じて解離が発生することがあります。
動脈硬化もまた、大動脈解離の原因として重要です。
動脈硬化は、動脈の壁が硬くなる状態で、これにより血管の柔軟性が失われ、外部からの圧力に対する耐性が低下します。
動脈硬化が進行すると、血管壁にプラークと呼ばれる脂肪の塊が形成され、その部分がもろくなるため、解離が起こりやすくなります。
動脈硬化は、主に喫煙や不適切な食生活、運動不足、肥満などの生活習慣が原因で進行しますが、加齢や遺伝的要因も影響します。
遺伝的な要因としては、マルファン症候群やエーラス・ダンロス症候群などが挙げられます。
これらの疾患は、結合組織の異常を引き起こし、血管壁が弱くなるため、大動脈解離のリスクが高まります。
そのほかの要因としては、外傷や感染症、薬物の影響が考えられます。
例えば、胸部に強い衝撃を受ける外傷や、動脈に感染が広がる感染症などが原因で大動脈解離が発生することがあります。
また、一部の薬物、特にコカインなどの薬物は、血圧を急激に上昇させ、大動脈解離のリスクを増大させることが知られています。
配信: Medical DOC