大動脈解離の前兆や初期症状について
最も一般的な症状は、突然発生する激しい胸痛や背中の痛みです。
この痛みはしばしば「引き裂かれるような」と形容され、その強さと突然の発生はほかの心血管疾患と異なり、特異的です。
胸痛や背中の痛みは移動するという特徴を持ちます。
痛みが胸から背中、さらには腹部や腰にまで広がることがあり、これは解離が進行していることを示しています。
血圧の異常も大動脈解離の重要な兆候です。
例えば、左右の腕で血圧を測定したときに大きな差がある場合、それは解離によって大動脈の一部が閉塞し、血流が阻害されている可能性があります。
また、解離が脳に供給される血液に影響を及ぼすと、意識障害やめまい、さらには失神といった症状が現れることがあります。
呼吸困難や息切れも、解離が心臓や肺の血流に影響を与えた場合に発生することがあります。
特に、胸部の大動脈解離の場合、心臓への血流が妨げられることで、心臓が十分に機能せず、呼吸が困難になることがあります。
また、解離が腹部に及ぶと、腹痛や消化器系の異常も引き起こされることがあります。
下肢の冷感やしびれ、さらには麻痺も、大動脈解離の重要な症状です。
これらの症状は、解離が下行大動脈に及び、下肢に供給される血液が減少することによって発生します。
解離が進行すると、脚の血流が著しく減少し、最終的には壊死に至ることもあります。
大動脈解離の症状は多岐にわたるため、初期症状の段階で迅速に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
症状を見逃さず、早期に対応することで、重篤な合併症を防ぐことができます。
循環器のある病院に受診することが重要です。
心臓血管外科が対応できる病院だと望ましいです。
大動脈解離の検査・診断
大動脈解離の診断には、複数の検査が必要です。
胸部X線検査
胸部の大動脈の形状や位置に異常がないかを確認するための基本的な検査です。
X線で大動脈の拡張や異常な影を確認できる場合、それが大動脈解離の初期の兆候であることがあります。
CT(コンピュータ断層撮影)スキャン
大動脈の詳細な断面画像を提供し、解離の有無や範囲を確認するのに有効です。
特に、造影剤を使用することで、大動脈の内腔(内側の空間)と偽腔(新たに形成された血流の道)を明確に区別することができます。
CTスキャンは迅速で非侵襲的なため、急性期の診断に適しています。
MRI(磁気共鳴画像)
解離の診断に使用されることがあります。
MRIは、放射線を使用せずに詳細な画像を提供できるため、放射線被ばくを避けたい患者にとっては有益です。
ただし、MRIはCTスキャンに比べて撮影に時間がかかるため、緊急度の高い場合にはCTスキャンが優先されることが多いです。
エコー(超音波検査)
特に経食道エコー(TEE)は、食道を通して心臓や大動脈を詳細に観察することができ、大動脈解離の診断に有効な診断ツールです。
TEEは、心臓や大動脈の近くにプローブを配置することで、通常の胸部エコーでは見えにくい部分も明確に映し出すことができます。
血液検査
血液検査も診断の一環として行われることがあります。
特定の酵素やタンパク質のレベルが上昇している場合、それが解離による心臓やほかの臓器への負担を示すことがあります。
ただし、血液検査だけでは解離の診断を確定することはできないため、ほかの画像診断と組み合わせて使用されます。
これらの検査結果を総合的に判断し、大動脈解離が疑われる場合は、迅速に治療が開始されます。
診断が遅れると、解離が進行し、生命を脅かす合併症を引き起こす可能性があるため、早期診断が重要です。
配信: Medical DOC