偏西風蛇行の原因
偏西風蛇行そのものは珍しい現象ではありません。
ロスビー波といって偏西風とは逆向きに働く地球規模の波動や、エルニーニョ現象によって偏西風が蛇行する場合もあります。
また近年はそれとは別に地球温暖化に伴い北極の気温が上昇することにより、大きな偏西風蛇行が起こりやすくなっているという説もあります。
これは北極の気温上昇が偏西風蛇行をもたらすのは、北極と赤道の気温差が小さくなり、偏西風の勢いが弱まるというものです。
偏西風は北極と赤道の気温差が大きいほど強く吹き、風速が強いほど東西方向に安定して風が吹きます。一方、北極と赤道の気温差が小さくなると偏西風が弱まり、ふにゃふにゃと南北に蛇行しやすくなるというわけです。
地球温暖化は世界で起こっている現象であるものの、北極は他のエリアの2倍以上の速さで温暖化が進んでいます。
記録的猛暑の原因も偏西風の蛇行?
2024年の夏から秋に記録的な高温になったのは、偏西風が北に蛇行したことで、背の高い高気圧に覆われ続けたためです。
また、2022年や2023年も記録的な暑さでしたが、いずれも偏西風が北に蛇行したことが原因の一つに挙げられています。
このように記録的な暑さには偏西風の蛇行が深く関わっています。
今後の傾向
今後も地球温暖化によって北極付近の気温が先行して上昇すると、赤道との温度差が小さくなり、偏西風蛇行が大きくなる可能性もあります。
そうなった場合、異常高温や異常低温、水害、干ばつなどの災害も増えると予想されます。
ちなみに近年の夏の暑さは、偏西風が北に蛇行している部分に日本が位置するためですが、偏西風が南に蛇行する位置に日本が重なると記録的な冷夏をもたらす可能性もあります。
今後は今より極端な気象が増えると予想されるため、早めのタイミングで備えることが大切です。
偏西風蛇行による異常気象の前兆は気象庁の季節予報や2週間気温予報である程度の把握ができます。
例えば、「季節予報で高温が予想されている場合は、今後偏西風が北に蛇行する」「2週間気温予報で低温が予想されている場合は、今後偏西風が南に蛇行する」と判断もできます。
また、季節予報の解説で偏西風の位置や蛇行具合、それに紐づいた天候の見通しも解説されています。このような解説を確認し、「異常気象がなぜ起こるのか?」が理解できるようになると、季節予報や2週間気温予報を通して早めの備えができるようになります。
偏西風というワードは気象情報やニュースでもよく見聞きするため、仕組みや異常気象との関係を知り、注目してみると良いでしょう。
〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。
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配信: 防災ニッポン
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