「馬尾神経腫瘍」という疾患を知っているでしょうか? 10万人に1人と言われている珍しい疾患で、話を聞いた河野さん自身もなかなか情報が集められず困ってしまったそうです。この聞き慣れない疾患を患ったことによる経験を聞かせてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年6月取材。
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体験者プロフィール:
河野 晃
東京都在住、1973年生まれ。診断時の職業は、中学校教員。「馬尾神経腫瘍」と診断され、手術を受ける5年以上前から不調は感じていた。手術により腫瘍切除、その後定期的にMRIにて半年~1年毎に経過観察するが腫瘍の再発は確認できず、現在に至る。受診した診療科は整形外科。
記事監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
背骨の痛みは「単なる痛み」ではなかった
編集部
まず初めに、河野さんが抱えている疾患について教えていただけますか?
河野さん
馬尾神経腫瘍です。「馬尾」とは、脳から伸びる脊髄が枝分かれした細い神経のことを言います。背骨の中で、硬膜という膜に覆われて、髄液という水に囲まれています。馬尾神経腫瘍とは、この馬尾の部分に腫瘍ができ、腰痛や下肢(脚)痛などの症状を引き起こす疾患です。
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
河野さん
診断、そして手術を受ける5年以上前から体の不調を感じることがありました。体調が悪いときに、左足に痺れが走るような痛みを感じることがありました。最初は近所の整形外科専門の医院を受診し、そこでレントゲンを撮りました。わずかに脊椎のズレがあるようにも見えたため、その時には「椎間板ヘルニア」と診断されました。そして、腕と足に重りをつけて伸ばす牽引を何度か行い、その直後には症状が改善したような感じもしていました。しかし、しばらくするとまた痛むようになりました。体調がいいときは、数カ月まったく無自覚の時もあったのですが、痛みを感じる頻度が増え、その痛みも次第に強くなってきて、これはただのヘルニアではないのではないかと考えました。
編集部
また別の病院を受診されたそうですね?
河野さん
はい。まずは近所の総合病院に行き、外科でレントゲンを撮ったのですが異常は見当たりませんでした。ですが、自覚症状を伝えたところ「これは大きな病院でMRIを撮った方がよい」と言われ、別の病院へ行きました。そこでMRIを撮影し、馬尾神経に腫瘍が見つかり、診断がつきました。
編集部
診断がついたときの心境について教えてください。
河野さん
文字通り、「えっ」という感じでした。そして時間の経過とともに、「悪性腫瘍だったらどうしよう」と不安が大きくなりました。医師からは「恐らく悪性ではないだろうと思われるけれど、こればかりは実際に手術して取り出し、検査してみないとわからない」とも言われていました。結局は、悪性腫瘍ではないことがわかりました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
河野さん
腫瘍は自然に小さくなることはないため、そのまま様子をみていくか、手術で取るかだと言われました。
長時間同じ姿勢でいることが辛くなり、手術を決断
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
河野さん
診断後もしばらくの間は体調がよいときは、普通の生活を送ることができていました。ただ、次第に腫瘍も大きくなってきたためか、体調がよいときでも軽くうずくような痺れがあり、次第にくしゃみをするだけでも痺れが走るような辛い状態になっていきました。また長時間同じ姿勢で座っていることができなくなりました。
編集部
中学校の先生をされていたそうですが、授業はどうされていたのでしょうか?
河野さん
授業や日常生活は、騙しだまし行っていました。処方されていたロキソニン(痛み止め)を飲むことで、多少は痛みが緩和されましたが、痛みが強く辛い日もありました。
編集部
手術は受けたのですか?
河野さん
そんな日が続いていたので入院、手術は中学校の春休み期間に行うことを決めました。決断のタイミングは、直前の2月頭だったと記憶しています。その頃も、痛まないときはまったく痛まないけれど、気圧が低いときなどにはかなりの痛みが脚に走るような状態でした。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
河野さん
手術後から数年間は、半年~1年ごとに腫瘍の再発がないかMRI撮影を行いました。幸い、再発もなく十年以上が経ち、現在では発症前と同じ日常生活を送っています。
配信: Medical DOC