「子どもが問題行動を起こすのは、その子自身に問題があるのではなく、その場所に子どもにとってつらいことがあるからです。学校の教室内で問題行動を起こすなら、学校にいることが嫌なのです。このとき、子どもにとって家で楽しいことができる場所であれば、楽しさでつらさを中和することができます」
こう話すのは心療内科医師の赤沼侃史(あかぬまつよし)先生。家庭で子どもがつらい状態をリセットしている状態ならば、学校での問題行動は防げるのだという。
ところが今の家庭では、子どもは帰ってきた途端に「塾へ行きなさい」「宿題しなさい」と言われてしまうことも多い。心より学業や成績が優先される家庭の学校化は問題だという。
「昔の子どもは勉強ができなくても注意されませんでしたが、今は家庭でも子どもを管理しすぎています。例えば、子どもにとって楽しいゲームも『30分だけ』と制限されています。これでは心のつらさを解消したくてもできません。一見問題がありそうなゲームも子どもにとっては必要があってやっていること。心が満足をすれば、自然と卒業できるものです」
ちなみに、親は子どもが問題行動の予兆を事前に気付けるものなの?
「子どもによって反応は違いますが、元気がなくなるなど、いつもと違う様子が見られると思います。この段階で親が対応できればいいですね。ただし気付いたとしても、多くの親がすることは、問題行動自体を指摘して矯正しようとすることです。それでは逆効果になってしまいます」
●つらい心を抱えて帰った子どもに母親ができること
では、ママはどう子どもと向き合ったらいいのだろう?
「母親に話を聞いてもらうことは、子どもにとって大きな喜びです。話は聴き出そうとせずに、子どもが言い出すのを待ちましょう。このときに母親が子どもの問題点を指摘したり、否定したりするようなことを言うと、子どもはつらくなってしまいます。相づちを打ちながら、『そんなつらいことがあったのね』と共感してあげましょう」
問題行動について親が対処せず状態が悪化してしまうと、子どもにうつや統合失調症などの心の病気に似た症状が出てくることがあるという。この場合、診察を受けた方がいいの?
「受診することで病名がつくこともありますが、問題行動は正常な心が出しているサインで、むしろ心に異常はありません。お化粧で隠しているようなもので、つらい心が出す症状を薬で押さえつけてしまうのは、問題を先延ばししている状態。多くのケースにおいて診断を受けることにメリットはありません」
子どもの心を癒すには、親が子どもの気持ちに共感することが欠かせない。宿題や塾の成績も心配になるが、まずは子どもの心に寄り沿った居場所づくりをしよう。
(ノオト+石水典子)