相手がパートナーでも、気の置けない友達であってもなかなか相談しにくい性交痛。
愛情を確かめ合うコミュニケーションに、苦痛が混ざってしまうのは、つらいことですよね。
なぜ痛みが生じてしまうのか、その対策方法は?
今回は、森女性クリニック院長の森久仁子先生にお話を伺いました。
誰にも相談できない悩み・・・性交痛
性交痛とはセックスの際に痛みを感じることです。
原因はさまざまで、一時的な症状もあれば、治療すべき疾患が隠れている場合、今後ますます悪化する場合もあります。
パートナーに伝えられず痛みを我慢している方、痛みがあるためセックスを断念している方もいることでしょう。
セックスに悩みがあると、パートナーとの関係に影響してしまうことも考えられます。
本記事が、性交痛でお悩みのかたへの解決策になれば幸いです。
なぜ痛みが起こる?原因と対策
性交痛の原因、原因ごとの対策は以下のものが挙げられます。
痛みの部位により、考えられる疾患や解決策が異なるため、膣の入り口付近・膣の奥など、どこが痛いのか婦人科を受診する前に自分で確かめておくことをおすすめします。
1:緊張
何らかのストレスに対しての不安があったり、セックスに対して怖いという気持ちがあると緊張しやすく、リラックスして行うことが困難になります。
過去に性交痛があったり、セックスに関することでパートナーとトラブルになった既往などのマイナスイメージや、妊娠への不安などがあげられます。
リラックスしていない環境では膣内の潤いが不足したり、緊張により膣の周辺の筋肉が強く収縮して膣が狭くなり、痛みがおきます。
まずはパートナーに痛みがあることを伝えましょう。
リラックスできる環境作りをする、前戯を増やす、体位を変えてみるなど、パートナーと十分なコミュニケーションをはかることで、緊張状態が解消できる場合もあります。
焦らず徐々にできることを増やしていくようにしましょう。
2:子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣腫瘍
膣の奥に痛みがある場合は、婦人科疾患が隠れている場合があります。
代表的な疾患は子宮内膜症です。
子宮内膜症とは、子宮内膜の組織が子宮外に発生し増殖する病気です。
子宮以外の場所で月経毎に出血がおき、炎症や癒着をおこし、月経痛や性交痛や肛門痛を引き起こします。
子宮と大腸の間にあるダクラス窩というくぼみによくでき、セックスの際にその部位に刺激が加わると、痛みが起きます。
子宮内膜症は放置するとますます悪化したり、不妊症の原因となることがあります。
気になる症状がある場合は、婦人科を早めに受診しましょう。
他の疾患としては、子宮筋腫や卵巣腫瘍なども可能性があります。
婦人科疾患が性交痛の原因であれば、原因疾患を治療することで改善できます。
3:感染症や膣炎
膣内や膣の近くにある分泌腺に炎症があると、擦れて膣の入り口や奥に痛みがおきます。
子宮頸管炎など子宮の入り口に炎症があると、膣の奥の痛みがおきます。
特に性感染症の場合は、放置すると炎症がお腹に広がり、腹膜炎になる場合があります。
パートナーに感染する疾患もあるため、いつもと異なるおりものがある場合は特に、早めに婦人科を受診しましょう。
おりものの症状を伴わない性感染症もありますので、性交痛がある場合は、感染症の検査を受けておくことをおすすめします。
4:女性ホルモン
更年期の時期にさしかかると、エストロゲンという女性ホルモンが減少します。
それに伴って膣が乾燥したり、膣粘膜が薄くなったり、膣の伸展が悪くなることで、痛みがおきやすくなります。
更年期の時期ではなくても、エストロゲンを少なくする治療をしている場合は、同様の状態になります。
閉経後は外陰部や膣が萎縮し、さらに痛みが強くなる傾向があります。
治療は性交時に潤滑ゼリーを使用する、日頃から乾燥対策として外陰部を保湿するなどのセルフケアが効果的です。
婦人科での治療としては、女性ホルモンを補充する治療や、外陰部膣レーザー治療があります。
5:処女膜や性器の形、男女の性器の大きさ
膣の入り口には処女膜という柔らかく伸縮性のある襞(ひだ)があります。
生まれつき処女膜の厚みがあると、膣の入り口が狭く、男性器を膣内に挿入できない場合があります。
性器の形や膣の広さは個人差がありますので、不安があれば婦人科を受診しましょう。
男女の性器のアンバランスで痛みがおきることもあります。
その場合はいろいろな体位を試して、痛みが少なくなるような角度をパートナーと模索してみましょう。
パートナーに性交痛があることを伝えづらいかもしれません。
ですが、セックスはどちらも我慢することなく、お互いコミュニケーションを図りながら、楽しんで行うものです。
パートナーとセックスについて、痛いところや気持ちいいと感じるところなど、具体的に伝えられると、さらに良好な関係が築けるでしょう。
上記のうち、複数の原因が重なっている場合もあり、自分では原因がわかりづらいかもしれません。
性交痛が一時的ではなく、何度か続くようなら婦人科を受診しましょう。
恥ずかしい・気後れする・・・などあって、なかなか難しいかもしれませんが、医師が親身にお答えしますのでどうぞご相談くださいね。
[執筆者]
森久仁子先生
産婦人科専門医、医学博士
大阪医科大学を卒業後、同大学産婦人科学講座に入局。
同大学産婦人科学講座助教、和歌山労災病院をへて、平成25年和歌山市に森女性クリニックを開院。
プライバシーに配慮したクリニックで、産婦人科としての枠組みだけではなく、女性医療の充実を目指すべく診療を行っている。
森女性クリニック
配信: キレイ研究室
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