この季節になると「指先が冷える」「足先が冷たくなって眠れない」など、冷えに悩む方は多いのではないでしょうか?
でも、冷えに悩む人もいれば、全く気にしない人もいますよね。
その理由は?そしてどうすれば改善できるのでしょうか?
今回は、筑波胃腸病院の鈴木隆二先生に、冷えについてお話を伺いました。
悩む方が多い、冷え
冷えは万病のもとといわれ、悩む方も多いもの。
「たかが冷え」と捉え、軽く見たり、我慢したりしてしまう方もいるかもしれませんが、体の冷えを甘く見てはいけません。
冷えは「手足が冷たくて眠れない」だけではなく、全身やメンタル、さらには日々の生活の質にまで影響を与える可能性があります。
なぜ一部の人は特に冷えやすいのか、冷えによって起こるさまざまな影響、そして体を芯から温める方法(温活)まで、医学的に解説いたします。
冷える人と冷えない人の違い
冷えやすい人とそうでない人、実は大きく分かれる理由があります。
冷えやすい方には、以下の特徴が見られます
1.筋肉量が少ない
筋肉は「体内の発電所」です。
筋肉が少ないと熱を作り出す力が弱く、体が冷えやすくなります。
女性は男性に比べ筋肉が少なく、このため冷えやすいとされています。
2.血流が悪い
心臓から遠い手足に十分な血液が届かないと、体温が低くなります。
長時間のデスクワークやストレスが多い生活は血流を悪化させ、冷えの原因となります。
3.ホルモンバランス
特に女性の冷えはホルモンの影響が大きいです。
月経周期や更年期のホルモン変動が血流や体温調節に影響を与え、冷えを感じやすくさせます。
4.ストレス体質
意外にもメンタル面が冷えに影響します。
強いストレスや不安は交感神経を優位にし、血管を収縮させるため、体が冷えやすくなります。
冷えると起こる悪影響(全身・肌・髪・口腔内・精神面など)
冷えが引き起こす影響は、体の各部分にさまざまな形で現れます。
冷えを放置することで、以下のような悪影響が生じます。
1.全身への影響
慢性的に冷えると代謝が低下し、疲れやすくなるだけでなく、免疫の活性が落ち、風邪をひきやすくなります。
また、血流が悪いと酸素や栄養が行き渡りにくくなり、体力も落ちてしまいます。
2.肌
冷えによる血行不良でくすみや肌荒れ、乾燥がひどくなることも。
血流が滞ることで肌のターンオーバーが遅れ、顔色もくすんで見えるようになります。
3.髪
髪にも栄養が届かなくなり、薄毛やパサつき、切れ毛の原因になります。
冷えが慢性化すると、頭皮も硬くなり、育毛環境が悪化します。
4.口腔内
唾液の分泌が減少し、口が乾きやすくなります。
口内が乾燥すると口臭が気になるだけでなく、口内炎や歯周病リスクも上がります。
5.精神面
冷えは自律神経の乱れを引き起こします。
自律神経のバランスが崩れると、イライラや不安感、集中力の低下といった精神的な不調につながりやすくなります。
体を冷やさない工夫は?
冷えを防ぐためには、日々の生活で「温める工夫」を意識することが大切です。
手足を温めるために、ゆったりした靴下やレッグウォーマー、手袋などを活用しましょう。
特に足元が冷えやすい場合、足首を温めると効果的です。
そして、湯船に浸かるのは、体を芯から温める最も簡単な方法です。
お風呂の温度は40度前後で、10~15分ほど入浴すると効果的です。
アロマオイルやバスソルトを加えるとリラックス効果もアップします。
仕事中も温活を心がけるといいでしょう。
デスクワークの合間に簡単なストレッチや足の指を動かして血行を促進しましょう。
小さなブランケットを膝上に敷くのもおすすめです。
体を温めるために食べたいものとは?
体の芯から温めるために、内外の両方からアプローチするのが理想です。
食べ物でも温活を心がけましょう。
生姜、にんにく、ネギ、かぼちゃ、れんこんやにんじんといった根菜類は、体を温める働きがあります。
また、唐辛子などの香辛料も血流を促進します。
発酵食品(味噌、キムチなど)や温かいスープ類もいいでしょう。
ネギと根菜をたっぷり入れたお味噌汁に、すりおろした生姜を加えると、生姜と根菜の相乗効果で体がポカポカ温まります。
反対に、体を冷やすものとしては冷たい飲み物やアイスクリーム、スムージーなどがあげられます。
摂りすぎには注意しましょう。
また、カフェインも体を冷やしやすいので、特に寝る前は避けましょう。
熱をつくるのは筋肉。やはり運動もおすすめ
簡単な筋トレやストレッチなど、軽い運動をすることも重要です。
筋肉が動くことで体が温まります。
冷えを防ぐためにおすすめのトレーニングは「大きな筋肉」を動かすこと。
足やお尻、太ももなど、体の大部分を占める筋肉を使うことで、体温がしっかりと上がります。
スクワットは、大きな筋肉を使うので、短時間で体を温めるのに最適です。
膝がつま先よりも前に出ないように意識して行うと、足腰の負担が減ります。
また、足の指やふくらはぎ、太ももを中心に軽いストレッチを行うことで、血流がよくなり、体温を維持しやすくなります。
筋トレが苦手な方でも、毎日簡単なスクワットや軽いウォーキングを取り入れるだけで冷え対策になりますよ。
三日坊主になりがちな運動ですが、がんばって継続しましょう。
冷えに関して受診できる?何科に相談できる?
「冷え症かも?」と思ったら、以下の科で相談が可能です。
内科:原因が不明な場合、まずは内科を受診して全身の血行や代謝に異常がないか確認してもらいましょう。
婦人科:女性特有の冷えに悩んでいる場合は婦人科で相談すると、ホルモンバランスの視点から診察を受けられます。
漢方外来:冷えに有効な漢方薬を処方してもらうことも一つの方法です。
漢方は体質に応じた治療が可能で、冷え対策として多くの患者に支持されています。
「たかが冷えぐらいで、受診していいの?」
なんて思わず、医師にご相談ください。
特に女性は冷やさない方がいいって本当?
女性は男性よりも冷えの影響を受けやすく、冷えを放置するとホルモンバランスの乱れや婦人科系疾患が悪化するリスクが高まります。
例えば、月経痛がひどくなったり、不妊の原因につながることも。冷え対策は、女性にとって重要な健康管理の一部です。
前述したとおり、そもそも女性は男性より体が冷えやすい傾向があります。
冷え対策を取り、体を冷やさないようにしましょう。
[執筆者]
鈴木隆二先生
筑波胃腸病院理事長
日本消化器内視鏡学会専門医
日本外科学会専門医
全ての患者の健康を第一に考え、日々最新の医療技術を提供しています。
理事長として筑波胃腸病院と千葉柏駅前胃と大腸肛門の内視鏡日帰り手術クリニック健診プラザをメインに運営し、消化器疾患の早期発見と治療、予防に力を入れています。
筑波胃腸病院
配信: キレイ研究室
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