【獣医が解説】シニア猫がかかりやすい病気|主な症状や注意点、対策方法について

【獣医が解説】シニア猫がかかりやすい病気|主な症状や注意点、対策方法について

最近は猫が15歳くらい生きることも珍しくなくなってきました。8歳くらいからシニア期に入るので、猫は寿命の半分をシニアとして過ごすことになります。今回はシニア期にかかりやすい病気について解説します。

便秘

高齢になり、運動量や水分摂取量が減ってくると、猫も便秘がちになります。

日頃からお水を飲みやすいように工夫したり、水分の多いウエットフードを与えるなどして便秘予防をしてあげてください。

それでも便が硬いようなら、オリーブオイルを少量食餌に混ぜると排便が楽になることがあります。

ここでひとつ注意していただきたいことがあります。

猫が何度も排便姿勢をとっているのをみて、便秘だなと判断してしまわないことです。

「猫がトイレで唸っている、どうやら便秘みたいです」といって連れてこられた猫のなかには、便ではなく、おしっこが詰まって出ない状態になっていることがあるからです。

便が1~2日出なくても、猫が元気なら様子をみても構いません。

ただし、おしっこは毎日でないと腎臓が悪くなってしまいます。

猫がトイレで何回もしゃがみ込んでいるのを見たら、おしっこが出ているかは確認してください。

がん(悪性腫瘍)

乳腺腫瘍は避妊手術をしていないシニア猫が注意すべきがんですが、それ以外の猫も高齢になるとさまざまながんにかかる可能性があります。

シニア猫に比較的よくみられる腫瘍について解説します。

リンパ腫

胸の縦隔というところにできる縦隔型と、腸管にできる消化器型とに分けられます。

縦隔に腫瘍ができる猫はネコウイルス性白血病に罹患していることが多いので、検査でウイルスに感染していることが判明している猫は注意が必要です。

この腫瘍が大きくなると胸に水が溜まってくるため、猫は呼吸困難になります。

消化器型リンパ腫では腸管に腫瘍ができるため、猫は下痢と嘔吐を繰り返すようになります。

皮膚の腫瘍

猫は犬ほど皮膚腫瘍の発生は多くはありませんが、発生すると悪性であるものが多いのが特徴です。

鼻や耳などにできる扁平上皮癌、肥満細胞が腫瘍化した肥満細胞腫などがあります。

慢性腎臓病(慢性腎不全)

猫を飼っている人なら、猫は年をとると腎臓が悪くなる、という話は一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

実際、高齢の猫のほとんどが程度の差はあるにせよ、腎臓病にかかっているといっても過言ではありません。

慢性腎臓病とは、腎臓が長期間かけて機能を低下させ、その結果体内の老廃物を排出できなくなってしまう病気です。

慢性という名の通り、急におきる病気ではなく加齢にともない徐々に進行していきます。

慢性腎不全になりやすい猫

先述した通り、慢性腎臓病は年をとればどんな猫でもかかる可能性のある病気です。

しかし、シニア期に腎臓が特に悪くなりやすい猫というのがいます。

それは、若い時に膀胱炎や尿石症などの下部尿路疾患にかかったことのある猫です。

特にオス猫は尿石症になるとおしっこが出にくくなり、なかには全く出なくなってしまう子もいます。

その時は治療しておしっこを出すのですが、下部尿路疾患は繰り返しやすいため、腎臓へのダメージが蓄積されていくものと考えられます。

猫の慢性腎臓病を完全に防ぐことは難しいかもしれませんが、若い時から水分不足や運動不足に気をつけて下部尿路疾患にならないようにすることは重要かと思います。

症状

水をたくさん飲むようになる。

食欲が減る

毛づやが悪くなる。

痩せてくる。

おしっこの量が増え、あまり匂わなくなる。

嘔吐する

口臭がきつくなる

貧血で歯茎の色が白っぽくなる。

腎不全が進行すると尿毒症となり、毒素が脳にダメージを与えるため、痙攣発作が起こることもあります。

治療法

一度壊れてしまった腎臓の機能を元に戻すことはできません。

そのため、治療は腎不全に伴う不快な症状を軽くして、猫の生活の質(QOL)を向上させるために対症療法が行われます。

腎機能が低下すると、猫は脱水が進行します。

そのため、ときどき点滴をすることでその都度脱水状態を改善していきます。

また、点滴は体に溜まった老廃物を体外に出すためにも行われます。

腎臓では赤血球産生を促すホルモンが産生されているため、腎機能が低下するとそのホルモンが減ってしまいます。

そのため猫は貧血になってしまうのです。

貧血のひどい猫には、造血ホルモン剤が投与されることもあります。

療法食による食事療法、内服薬、サプリメント、点滴などにより病気の進行を遅らせ、延命をはかります。

自宅でできること

慢性腎不全になると、猫は老廃物を体外に排出しようとして、おしっこをたくさん出します。

そのぶん、水を多く飲む必要があるので、飲水量は増えます。

それでも、脱水は進行してしまうので点滴で補ったりするのですが、自宅では猫が水分不足にならないように気をつけてあげてほしいと思います。

水を数か所にわけて置いたり、流水が好きな猫には循環式の自動給水器を用いる方法もあります。

飲水だけで水分を補うのは難しいこともあるので、ウエットフードを使うのは良い方法だと思います。

また、猫の腎臓病にはストレスも関わっているという報告もありますので、ストレスが少ない環境にすることは延命につながるものと思います。

かなりの高齢になってくると、猫も動くのが億劫になるようです。

トイレが遠いこともストレスになり得ます。

トイレの数を増やしたり、入りやすいトイレに変えるなどの工夫が効果的なこともあります。

ただし、急にトイレの形状を変えるとびっくりしてしまう猫もいるので、まずは今までと同じトイレをもう一つ用意して、残りの一つを入りやすそうなトイレに変えるといいでしょう。

お盆や正月など、家族以外の人がたくさん来た時などは、猫によってはとてもストレスになります。

来客があっても猫が静かに過ごせる場所を用意できるといいのではと思います。

まとめ

シニア期に入ると消化機能が衰え、免疫力も落ちてきます。

これは致し方ないことです。

今回解説してきた病気は早期発見が重要だと書きました。

その通りではあるのですが、猫が病気にならないかとあまり神経質にありすぎるのも、また考えものです。

飼い主さんが心配しすぎるあまり、猫がストレスを抱え込むようになってしまうのも困りますよね。

例えば、加齢による弊害を防ぐ目的で猫用にもさまざまなサプリメントが用意されています。

これらを用いることもいいのですが、猫は投薬の難しい動物です。

フードに混ぜて簡単に食べてくれるのであれば、試す価値はあります。

ただし、口を開けて無理やり飲ませなくてはならない場合、それを毎日続けるのは猫とって大きなストレスだと思います。

効果のあるものだとわかっていても、ご自分の猫には合わないということもあるのです。

また、シニア期といっても10歳の猫と18歳の猫とでは違ってきます。

10歳の猫に積極的に行っていた検査や治療を、18歳の猫に行うとかえってよくないことがあります。

猫がなるべく快適に生活を送れて、飼い主さんも納得のいく方法を選択していくことが大切ではないでしょうか。

とくにシニア猫は住環境の変化に弱いので、お気に入りの静かで落ち着ける環境を用意してあげるといいと思います。

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