これまで食べた中華料理は5000食以上! 酒徒さんが提案する、新しい家中華レシピ

これまで食べた中華料理は5000食以上! 酒徒さんが提案する、新しい家中華レシピ

手軽に作れる「中華料理」で人気を獲得



小竹:まずは私から酒徒さんのプロフィールをご紹介させていただきます。大学1年の夏に初めて訪れた中国でローカル中華料理の多彩さとおいしさに魅了されてからおよそ四半世紀、中国各地の食べ歩きをライフワークとされています。お仕事は食とは無縁のサラリーマンで、2000年代半ばから北京、広州、上海に通算10年駐在し、2019年に帰国。本場で知った中華料理のレシピをnoteやSNSで紹介する一方、2023年にマガジンハウスより出版した初のレシピ本『手軽 あっさり 毎日食べたい 新しい家中華』は発売直後から話題となり、第11回料理レシピ本大賞にて「プロの選んだレシピ賞」と「料理部門入賞」をダブル受賞。今、大注目の中華料理愛好家、それが酒徒さんです。

酒徒さん(以下、敬称略):すごく恥ずかしいです(笑)。

小竹:まずはダブル受賞、おめでとうございます。受賞を聞いたときはどう思われましたか?

酒徒:僕でいいのかなという困惑、そして、盆と正月がいっぺんに来たような喜びという単語が初めて頭の中に浮かびました。1つの受賞ならともかくダブル受賞で、しかも「プロの選んだレシピ賞」をプロから最も遠い人間がもらっていいのだろうかという、驚きと喜びが入り混じったような気持ちでした。

小竹:ご自身としては、なぜこんなに多くの方に愛されているのだと思いますか?

酒徒:手軽で身近な食材で作れたり、野菜をたっぷり食べられたり、季節の食材を使えたりという、今の日本で受け入れられやすい要素がもともと中国の家庭料理の中にはありました。それがあまりにも知られていなかったので、そういうものがあるという驚きも相まって、多くの人にインパクトを与えたのかなと感じます。

小竹:もともとはnoteに書かれていたレシピであったそうですが、本にするときに何か変えた部分はあったのですか?

酒徒:もちろん調整はしましたが、数ある中から78品を選ぶときに、本当に手軽でスーパーの食材で作れるものを基本にすることは明確に意識していました。僕は時間がかかる料理や変なものを取り寄せて作る料理も好きなのですが、みなさんは日々の料理として見ているので、一般的に伸びるのはやはり簡単に作れるものです。

小竹:では、この78品も人気のあるものを選んだ感じですか?

酒徒:そうです。あとは、作っていただきやすいものと僕自身が日常的に作っているものが多かったですね。変なものは2~3個だけ入れています。

小竹:それはどれですか?

酒徒:自家製ラー油とかですね。食材を全て揃えられる人はほぼいないと思うのですが、わがままで入れさせてもらいました。丸鶏をそのまま1時間煮込む料理も、こういうのがあってもいいかもみたいな形で入れてもらいました。

自家製の辣椒油(ラー油)

清燉全鶏(丸鶏の煮込みスープ)

知らない料理がたくさんあることへの驚き


小竹:中華料理にハマったのはいつ頃からなのですか?

酒徒:小学生の頃から三国志の漫画を読んだり、人形劇を見たりしていて、中国の歴史に興味を持っていました。それで歴史を勉強しようと思って、大学1年生の夏に北京に行ったのですが、現地の料理を食べたら想像していたよりも遥かに幅も広くておいしくて。稲妻が走るような衝撃で、自分の中の歴史への興味が料理への興味にすり替わるくらいのインパクトがあったんです。

小竹:そのときは何を食べたのですか?

酒徒:いろいろと食べた中でも印象的だったのが、北京の水餃子です。日本の皮の薄い餃子とは違い、もっちりとした主食としての皮の厚さを持った水餃子で、皮がつるりとして香りが良くて、皮自体がおいしい上に餡のバリエーションもすごいんです。

小竹:日本だと1種類ですもんね。

酒徒:肉も牛、羊、豚などがあって、そこに掛け合わせる野菜も季節野菜が何個もある。それをかけ算していくので、1つのお店だけでも餡が何十種類もあるんです。そういう世界を全く想定していなくて、しかもそれを黒酢だけで食べさせる硬派さもかっこいいと思いましたね。

小竹:かっこいいですよね。

酒徒:当時、北京の水餃子は1皿単位ではなく、粉の重さ単位で注文する形でした。でも、それをよくわかっていなくて、「1斤」と書いてあるものを頼んだら、粉500グラムだった(笑)。それを餃子にするのですごい量になって、友達と途方に暮れました。でも、知っているはずの餃子がこんなにおいしいんだというのは驚きでした。

小竹:ほかにも驚きはあった?

酒徒:知らない料理がこんなにあるんだという驚きもありましたね。周りの人が食べているものを見ると、日本の中華料理屋ではまず見ないような料理がいっぱい並んでいる。それで品書きを開くと4文字くらいの漢字がバーッと並んでいて、ちょっと中国語を勉強した程度の人間ではさっぱりわからないわけです。

小竹:うんうん。

酒徒:そこでどんどん好奇心が湧き起こってきて、これはどういう意味なんだろうとか、あれはなんだろうとなり、もう全部食べてみたいと思ってしまう。それが自分の初期衝動ですね。

小竹:中国の歴史から中国の食の歴史に絞り込まれてしまった瞬間ですね(笑)。

酒徒:そうですね(笑)。とりあえず、これが全部わかるようになりたいというのが、語学を学ぶモチベーションにもなりました。

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