「闇金の高金利は返済不可能だから、借り逃げしか道がない…」と考える人もいるでしょう。
確かに法的には、闇金から過剰な金利で借りたお金は、元本と利息の支払いが免除されることがあります。しかし、借り逃げには多くのリスクが伴い、現実的には非常に困難です。
そこで今回は、
闇金からの借り逃げに伴うリスクと注意点
闇金業者から借金を合法的に免除する方法
借金問題を根本的に解決するためのアプローチ
について、ベリーベスト法律事務所の弁護士がわかりやすく解説します。
弁護士相談に不安がある方!こちらをご覧ください。
1、そもそも闇金から借り逃げできるの?
「借り逃げ」とは、お金を借りて返済をしないまま、姿をくらまして逃げる行為のことをいいます。「借りパク」と表現されることもあります。
冒頭で、借り逃げをするのは現実的に極めて難しいと説明しましたが、不可能というわけではありません。
(1)理論上は借り逃げ可能
結論として、理論上は借り逃げすることも可能です。なぜなら、闇金による貸付は違法であり、契約が無効だからです。
貸金業登録をしている正規の消費者金融等からの借り入れとは異なり、闇金からの借り入れは契約無効なので、返済する義務はないのです。
返済義務がないという点について、詳しくご説明します。
(2)闇金への返済義務はない
利息制限法で、借金の上限利率は借入額に応じて年15~20%と定められています。これを超える金利の契約は違法であり、無効ということになります。
出資法でも、年20%(2010年6月18日の改正出資法施行前は29.2%)を超える金利の契約をした貸金業者には刑事罰が科せられます。この通り出資法の上限金利を超える金利での貸付は犯罪に該当しますので、借りたお金は「不法原因給付」に当たります。
不法原因給付については、民法で「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない」と定められています(同法第708条)。つまり、闇金業者は貸したお金の返済を法律上請求することはできず、その結果、借りた側は利息はもちろん、元金も返済する義務を負わないのです。
もっとも、従前は「利息はともかく、元金は返済すべきではないか」という考え方もありました。
しかし、最高裁判所で「著しく高利の貸付は反倫理的行為に該当する不法行為の手段なので不法原因給付にあたる」という判決が下され(最高裁平成20年6月10日判決)、元金の返済義務もないことが明らかとなりました。
今では、貸金業法も改正され、年109.5%を超える金利による貸付は法律上無効であることが明文で規定されています。
貸金業法 第四十二条 第一項
(高金利を定めた金銭消費貸借契約の無効)
貸金業を営む者が業として行う金銭を目的とする消費貸借の契約(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつて金銭を交付する契約を含む。)において、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。)の契約をしたときは、当該消費貸借の契約は、無効とする。
(3)闇金も完済は望んでいない
実は、闇金業者も最初から完済は望んでいないという実態もあります。
闇金業者の手口は、少額のお金を貸し付けて利息の名目で暴利を得ることです。完済されてしまうと利息を要求できなくなるため、闇金業者にとって望ましいことではないわけです。
実際、借り手が完済しようとすると連絡を絶ったり、「契約を終了するなら別途、手数料がかかる」などと言って完済させないようにする闇金業者も多数います。真面目に利息を支払う人ほど、闇金業者の「カモ」になってしまい、次々に利息を要求されるのが実情です。
闇金のカモにならないためには、結局「借り逃げ」をする必要がありますが、安易に逃げようとすると多大なリスクを負ってしまうので注意が必要です。
2、闇金から借り逃げした場合のリスク
闇金から借り逃げをしようとすると、さまざまな嫌がらせを受けるというリスクがあります。具体的には、以下のような嫌がらせを受ける可能性が非常に高いです。
(1)執拗に電話がかかってくる
まず、闇金から執拗に電話がかかってきて、返済を要求されます。電話がかかってくる回数も1日数回というものではなく、100回以上に及ぶケースも珍しくありません。
闇金としては、お金を払わなければ執拗に電話がかかってくるという精神的圧力をかけるのが目的なので、生活に支障をきたすほど頻繁にかけてきます。電話に出ると、脅迫めいた強い口調で返済を迫られます。
(2)家族や親族が取り立てにあう
闇金から電話がかかってくるのは、本人だけではありません。家族や親族のところにもかかってくるのが一般的です。
闇金は通常、お金を貸し付けるときに実家や兄弟姉妹、親戚、友人知人などの連絡先も申告させます。そして、借りた本人の返済が滞ったり電話に出なかったりすると、家族や親族、ときには友人知人にまで闇金からの電話がかかってきます。
これらの人たちが電話に出ると、闇金は「本人が返せないのなら親族に返してもらうしかない」、「あなたは保証人になっているから返済する義務がある」などと言って返済を迫ります。
このような事態になると、家族や親族、友人知人との関係も壊れてしまい、孤立してしまうおそれもあります。
闇金も第三者に返済義務がないことは分かっていますが、関係者に対して取り立てを行うことで本人を精神的に追いつめるのが狙いです。
(3)職場に取り立てにくる
闇金による取り立ては、さらに本人の職場にまで及ぶことが多いです。それも、本人宛にかけてくるのではなく、上司や経営者などに対して「そちらにお勤めの〇〇さんがお金を借りて返さない。何とかしてもらえないか」などと言うのです。
このような電話が職場にかかってくると、闇金から借金したことがバレてしまうだけでなく、頻繁に電話がかかってくることで会社の業務にも支障をきたしてしまいます。その結果、本人が退職に追い込まれるケースも少なくありません。
(4)大量の出前やデリバリーが届く
闇金による嫌がらせとして、大量の寿司やピザなどの出前・デリバリーを勝手に注文して本人宅に届けさせるという行為もあります。あるいは、救急車や消防車などを呼ばれるというケースもあります。
これらの行為も、本人を精神的に追い込むための手段です。
(5)住所を変えても追いかけてくる
闇金から逃げるために引っ越しをしても、闇金は住民票を調査して追いかけてきます。だからといって住民票を移さなければ自治体からの公的サービスが受けられませんので、生活に支障をきたしてしまいます。
また、同じ自治体のなかで身を隠したとしても、闇金は関係者から情報を巧妙に聞き出すなどして本人の居場所を突き止めるケースが非常に多いです。
このように、現実的には闇金から借り逃げをすることは非常に難しいといえます。
(6)詐欺罪に問われることもある
以上、闇金による嫌がらせの主な手口をご紹介しましたが、もう一点、注意が必要なリスクがあります。
それは、たとえ違法な闇金業者が相手であっても、最初から返す意思もなく借りて逃げることは詐欺罪(刑法第246条1項)に該当するため、罪に問われる可能性があるということです。
闇金に対して法律上の返済義務がないとはいっても、それを逆手にとってお金をだまし取るような行為をしてはいけません。
配信: LEGAL MALL