3、自転車窃盗の犯人を特定できるケース
自転車窃盗が罪に該当するのだとしても、その犯人を特定できなければ罪に問うことができません。
では、どんな場合に犯人を特定でき、窃盗罪や占有離脱物横領罪に問うことができるのでしょうか?
(1)直接証拠がある場合
ここでいう直接証拠とは、「犯人が自転車を盗ったこと」を直接に証明しうる人の供述・証言、あるいは物的証拠をいいます。
具体的には、犯人が自転車を盗ったところを見た、という「あなたや第三者の供述・証言」、犯人が自転車を盗った場面が鮮明に映し出された「防犯ビデオカメラ」などが挙げられます。
(2)十分な間接証拠がある場合
間接証拠とは、「犯人が自転車を盗ったこと」を推認(推測)させる事実(間接事実)を証明するのに役立つ証拠をいいます。
例えば、「犯人があなたの自転車に乗っていた」という間接事実は、犯人が「自転車を盗ったこと」を推認させる事実です。この間接事実を証明するのに役立つ証拠としては、「犯人があなたの自転車を乗っているところを見た、現認した」という「第三者の供述・証言」などが挙げられます。
なお、この「第三者の供述・証言」は窃盗罪との関係では間接証拠ですが、占有離脱物横領罪との関係では直接証拠となります(犯人が自転車に乗っているところを警察官に職務質問されたケースなどが典型です)。
(3)特定、検挙は難しいのが現実
以上のように、証拠があれば犯人を特定し検挙することは可能ですが、なかなかそう簡単にいくものではありません。
なぜなら、犯人が自転車を盗る場面を見る、とういのは稀ですし(犯人はばれないように盗る)、自転車を駐輪するところ全てに防犯カメラが設置されているわけでもないからです。
このことは数字にも表れています。
先ほど、「自転車盗」の認知件数については窃盗の手口の中で一番だとご紹介しましたが、実は、これを検挙件数(16万1016件)でみると「万引き(全体の39.4%)」、「その他の非侵入窃盗(17.7%)」、「車上・部品ねらい(6.2%)」に次ぐ4番目(5.3%)と順位が落ちます。
令和3年度の「自転車盗」の検挙件数は8.508件ですから、これを認知件数16万1016件で割ると約5.3%、つまり、「20件中1件」しか検挙されていない計算となります。
出典:令和4年版 犯罪白書
4、自転車窃盗に遭わないためにできること
このように、自転車を盗られると犯人を検挙することは困難となりますから、まずはご自身でしっかりとした対策を講じることが必要です。
(1)防犯対策がとられている駐輪場、駐車場に停めよう
監視員がいる、施錠できる固定物がある、防犯カメラが常時作動しているなど、防犯対策がとられている駐輪場、駐車場に停めましょう。
これだけでもかなり被害を防ぐことができます。
(2)短時間でも施錠しよう
その上で必ず施錠しましょう。
防犯対策が取られているからといって油断してはいけません。
盗まれるときは盗まれます。施錠は、シリンダー式のものやU字ロックが効果的です。
自転車から離れる時間が短時間でも必ず施錠しましょう。
(3)防犯登録をしよう
防犯登録は「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的促進に関する法律」の12条3項で、自転車利用者の義務と規定されています(ただし、罰則はなし)。
防犯登録は、通常、自転車購入時になされますが、防犯登録されていない場合は近くの自転車取り扱い店などに持ち込んで登録しましょう。
(4)盗難保険への加入を検討しよう
近年は、街で高級なスポーツバイクを運転する方が多くなりました。
こうした自転車に対しては、もしものときのために盗難保険に加入することも検討しましょう。
配信: LEGAL MALL