5、背任罪で逮捕! -逮捕から裁判までの流れ
もし背任罪で逮捕されてしまったら―そんな万が一の事態に備えて、逮捕後の流れとポイントをまとめてお伝えしていきます。
(1)身柄が拘束されずに在宅捜査を受けるケースもある
まず押さえておきたいのが、背任罪では、警察・検察により逮捕されることは少なく在宅のまま捜査を受けるケースが圧倒的に多いという点です。
具体的には、平成25年度中、検察で処理した件数151件のうち逮捕されたのは13件(全体の8.6%)、逮捕されず在宅のまま捜査が進められた件数が138件(全体の91.4%)でした。
(2)警察による逮捕後はほぼ検察へ送致される
残念ながら逮捕に至ってしまった場合、その後の流れとしては、検察へ送致されるか否かの判断がなされます。
しかし警察段階で事件終了となるケースは多くはなく、逮捕後は検察へ送致されることを覚悟しておいたほうが良いでしょう。
具体的には、上の逮捕された13件のうち、警察で逮捕されたのは11件だったそうですが、その全てが検察へ送致されています。
もちろん、逮捕されなくても刑事手続は進みますから、逮捕されていたかったとしても検察へ送致されることはあります。
(3)勾留決定を受けると長期的に拘束される
検察へ送致されると、引き続き身柄を拘束するかの判断がなされます。
引き続き身柄を拘束する場合は、検察官による勾留請求がなされ、今度は、請求を受けた裁判官によって引き続き身柄を拘束するか(勾留)、釈放するかの判断がなされます。
勾留の要件(罪証隠滅のおそれや、逃亡のおそれ等)があると裁判官が判断した場合には、勾留決定を受けます。
勾留期間は検察官が「勾留請求をした日」から10日間です。
上の逮捕・送検された13件のうち、12件は勾留され、1件は検察段階で釈放されているようです。
つまり、検察に送致されるとほぼ勾留されることが分かります。
なお、10日間を過ぎた後、やむを得ない事由がある場合は期間を延長されることがあります(最大10日間)。
(4)起訴により刑事裁判に移る
検察官により起訴されると、裁判を受けなければなりません。
裁判の種類は2通りあり、一つは、皆さんがイメージされる法廷に出廷する裁判で正式裁判といいます。
もう一つは、法廷に出廷する必要がない略式裁判です。
略式裁判は100万以下の罰金や科料に相当する事件を対象とする裁判手続きですが、背任罪には罰金刑が規定されていますから、もし、検察官が罰金刑を求刑する場合は略式裁判となることもあります。
検察官が懲役刑を求刑する場合は正式裁判となります。
ちなみに、上の151件中,起訴された件数は13件(正式起訴11件、略式起訴2件、全体の8.6%)で、残りの138件は不起訴処分となっています(全体の91.4%)。
6、背任罪を疑われたら早めに弁護士に依頼して
背任罪の場合、警察・検察によって逮捕・勾留されることは稀で、むしろ在宅事件として捜査が進められることが多いほか、刑事処分も不起訴処分で終わることが多いことを述べました。
だからこそ、背任罪の容疑をかけられてしまった際にはなるべく速やかに弁護士に相談を行い、適切な対応をすべきと思われます。
(1)警察へ被害届を出される前に示談が成立することも
背任罪を疑われても、警察に被害届を出される前に、示談を成立させることができます。
示談を成立させることができれば、その内容によっては被害届の提出を取り止めてもらえる場合もあります。
被害届が提出されなければ、背任罪という犯罪の性質上、刑事事件化の可能性は極めて低くなり、逮捕されることはまずないと考えていいでしょう。
示談交渉を円滑に進め、有効な形で示談を成立させようと思うのであれば弁護士に示談交渉を依頼すべきでしょう。
なお、被害届の提出前(逮捕前)に、示談交渉できるのは私選の弁護士だけです。
(2)逮捕後も釈放や不起訴処分を目指すことができる
弁護人を付けていれば、逮捕直後から身柄の解放や不起訴処分に向けて弁護活動を始めることができます。
勾留されそうな場合は意見書を提出し、勾留された場合は準抗告を行っていくなどして、早期の身柄解放を目指すことができます。
また、相手方との示談交渉や、捜査機関に対する意見書の提出などの働きかけも行い、不起訴処分の獲得も目指すことができます。
配信: LEGAL MALL