7、別居したら必要な手続きは?
それまで一緒に暮らしていた夫婦が別居することになった場合、手続き上の問題として1番に浮上してくれるのが「住民票をどうするか」です。
そもそも住民票は本人が現在暮らしている家の住所を証明するものなので、結婚したままの状態でも夫婦別々に住民登録を行うこと自体はできます。
むしろ、別居先の住所にきちんと住民票を移しておかないと、実際に暮らしている市町村での行政サービスを受けることができなかったり、選挙の際にいちいち住民票のある市町村まで出向いたりしなければならず、何かと面倒です。
一方、住民票を移したら移したで気を付けなければならないポイントもあります。
【住民票を夫婦別々にする場合の注意点】
国民健康保険料の支払い方が変わる → 国民健康保険料は、住民票の世帯主が同じ世帯の人数分をまとめて支払う仕組みになっています。夫婦で住民票を分けた場合、それぞれが世帯主となるので保険料も各自で支払う必要が出てくるでしょう。
会社員の場合、家族手当の対象外となる可能性がある → 会社によっては、家族手当を出す条件として住民票が同じであることを挙げている場合もあります。
遺族年金がもらえなくなる可能性がある → 遺族年金の受給資格は、死亡した本人と生計を共にしていた妻と子にあります。住民票を分け、別々の暮らしを営んでいた場合は、「同一の家計である」ことを証明できるものがないと遺族年金の受給が認められないこともあるでしょう。
実際に住民票の手続きを行うかどうかは、これらのメリット・デメリットをふまえ、どれくらいの期間別居することを想定しているのかなども考えた上で、総合的に判断してください。
8、強制的に別居を解消する方法がある?
自分は別居したくなかったのに、相手が家を出て行ってしまった場合など、望まぬ別居を解消するために何か良い方法はあるのでしょうか?
そんなときに選択肢のひとつとなるのが「夫婦関係調整調停」で、別名「同居調停」と呼ばれていることからも分かるように、出て行った相手が家に戻ってきてくれるよう、調停委員を間に挟んで話し合いの場を持つことができます。
この同居調停は家庭裁判所で申し立てることができ、落ち着いて話し合いを進めた結果相手が家に帰ることを了承してくれるケースもありますが、この調停自体に同居を強制する力はありません。
望み通り別居を解消できるかどうかは相手を説得できるかどうかにかかっているので、あくまでもチャンスのひとつとして考えましょう。
9、卒婚という形もある?
みなさんは「卒婚」という言葉を聞いたことがありますか?
これは文字通り「結婚を卒業すること」で、離婚のように籍を抜くわけではありませんが、完全に夫婦が別々のライフスタイルを持ち、相手に縛られることなくそれぞれ自立して生きていくことを指します。
夫が定年退職を迎えたタイミングで卒婚を宣言する夫婦も多く、それまでお互い自分のことよりも家族のことを優先して一生懸命に生きてきた分、第二の人生は自分のために好きなように生きていきたい…という思いが卒婚の背景にはあるようです。
あえて離婚ではなく卒婚なのは、相手に対する愛情が変わったわけではないことや、夫婦として積み上げてきた歴史はそのまま残したいという思いがあるからで、法律上の婚姻状態は継続されているので、たとえばどちらかに新しく好きな人ができたような場合には注意も必要です。
どちらか片方が離婚を拒否しても、卒婚で別々に暮らしている期間が長いと裁判では離婚が認められやすく、離婚の際の財産分与も卒婚後に築いた財産については分与の対象にならないことがあります。
卒婚後の思わぬトラブルを避けるためにも、卒婚という道を選ぶときには細かい条件も含めてしっかり話し合いを行っておくことが必要不可欠でしょう。
10、家を建てるという選択
別居を考えているのに家を建てるというのは、真っ向対立する考えと思われるかもしれません。
しかし、前向きな別居の場合、意外と理にかなっているケースもあるかと思います。
現在の建築士・ハウスメーカーは、いろいろな家族のカタチに合わせて空間の設計をしてくれます。
1人の時間が欲しい、自分だけの空間が欲しい・・・1つの家の中であっても、様々なアイデアで希望を実現に近づけてくれるのです。
別居で生活費を2倍使える夫婦であれば、ローンを組むなど可能でしょう。
別居も夫婦のカタチとして新しく、おもしろく、そして自由で楽しい夫婦生活と思います。
でも、せっかく結婚したのであれば、自分たちの希望に合った、自分たちだけの家を建ててみてはいかがでしょうか。
想像以上にテンションが上がるかもしれません!
新築当初は個々を尊重した間取りにしたとしても、将来子供が生まれた時に対応できるよう、簡単に間取り変更ができる工夫を取り入れてもらうよう、新築の際に依頼してみると良いでしょう。
あなたに合ったカリスマ建築士に出会えることを願います。
Q&A
Q1.夫婦が「離婚に向かう」別居をする際の注意点は?
元々夫婦には民法で定められた「同居義務」があり、それまで何の問題もない仲良し夫婦だったのに突然一方的に家を出てしまったというようなケースでは、この義務を放棄したとみなされてしまう可能性があります。
Q2.離婚に向けた別居にもメリットとは?
十中八九離婚することを視野に入れた別居であっても、離れて暮らすうちにお互いの存在の大切さを見直すことができ、夫婦関係を修復するきっかけになることはありますし、実際に離婚に進んだとしても、離婚が成立するまでの間、夫婦問題の直接的なストレスから解放されるという点は立派なメリットのひとつです。
Q3.別居中の生活費は毎月いくらもらえる?
大体の目安としては裁判所などでも利用される 婚姻費用算定表 が参考になるでしょう。
たとえば、夫(支払う側)の年収が600万円、妻(受け取る側)が専業主婦で子供はいない場合、算定表にもとづく婚姻費用は10~12万円です。
また夫の年収が450万円、妻の年収が100万円で5歳の子供が1人いる場合は4~6万円となりますが、夫と妻の年収がこの例と同じ条件でも子供が2人(どちらも14歳以下)に増えると、婚姻費用は6~8万円にアップします。
まとめ
夫婦の別居には必ずしも離婚を前提にしたものだけでなく、お互いの存在をストレスに感じないよう、より良い夫婦関係を保つことを目的としたポジティブなものもあります。
離婚を前提にした別居にも、目の前の夫婦問題から一旦離れることができるというメリットがあり、落ち着いて話し合いを進める上では必要なステップのひとつとなることもあるでしょう。
実際に別居を行う際には、生活費の金額や住民票を移すのかどうかなど、具体的に決めていかなければならないことも色々とあります。
今回ご紹介した内容を参考に、ぜひみなさんもお互いに納得できる別居のスタイルを探ってみてください。
監修者:萩原 達也弁護士
ベリーベスト法律事務所、代表弁護士の萩原 達也です。
国内最大級の拠点数を誇り、クオリティーの高いリーガルサービスを、日本全国津々浦々にて提供することをモットーにしています。
また、所属する中国、アメリカをはじめとする海外の弁護士資格保有者や、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも当事務所の大きな特徴です。
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