離婚慰謝料請求と民法709条:不法行為責任の理解

離婚慰謝料請求と民法709条:不法行為責任の理解

3、民法709条と民法710条の違いとは?

慰謝料請求の問題についてインターネットなどで調べた時に、民法710条が一緒に検索に出てくることも多いと思います。

民法710条には、「他人の身体、自由もしくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない」と定められています。

つまり、民法710条では709条の中に規定されている「損害」には精神的損害も含まれることを示唆しています。

そして、この精神的損害に対する賠償金のことを一般的に「慰謝料」と呼びます。

実務上、慰謝料を請求する際には民法709条に加えて710条を根拠とすることになります。それ以上に民法710条と民法709条の違いを気にする必要はありません。

4、離婚事件で民法709条に基づく損害賠償請求が認められるケース

民法709条に基づく損害賠償責任について解説してきましたが、離婚事件で請求する「慰謝料」は、離婚によって生じる精神的苦痛を慰めるために支払われる損害賠償金になります。

それでは、どのようなケースで慰謝料を請求できるのでしょうか?

(1)配偶者が不倫・浮気をした場合

婚姻は一種の契約であり、夫婦は貞操義務を負うことになります。

貞操義務とは、配偶者以外の人と肉体関係を持つことを回避する義務のことです。

貞操義務違反は民法770条1項における法定離婚事由にも定められており(同項1号)、夫婦の共同生活の平和を破綻させる行為だと考えられています。

配偶者が不倫・浮気をして夫婦の共同生活の平和を破綻させたのであれば、不倫をした配偶者や不倫相手は不倫をされた配偶者に対して精神的苦痛を与えたことになります。そのため、精神的苦痛に対する損害として慰謝料を請求することが可能です。

(2)配偶者からDVやモラハラをされた場合

暴力行為は刑事上でも民法上でも違法行為に該当します。

そして、夫婦間であっても暴力を受けた場合は肉体的な損害に加え、暴力を受けるという恐怖を与えられることで精神的な損害も受けることになります。そのため、慰謝料を請求することが可能です。

暴力は身体的なものだけではなく、精神的なものもあります。怒鳴る・無視する・周囲の人と隔離される・生活費をもらえないなどの精神的な暴力の場合も違法行為に当たり、精神的苦痛に対する慰謝料を請求することができます。

こうしたDVやモラハラによって通院が必要になった場合、通院費用も併せて請求することが可能です。

関連記事: