刑法199条の殺人罪について分かりやすく解説

刑法199条の殺人罪について分かりやすく解説

5、刑法199条の殺人で有罪になると執行猶予はつかない?

万が一、自分や家族が刑法199条の殺人罪で有罪になった場合、執行猶予は付くのでしょうか? 執行猶予とは、有罪判決が下されても、一定の期間内に再び罪を犯さなければ判決で言い渡された刑罰の執行を免れるというものです。

すなわち、執行猶予がつけば有罪判決が下されても刑務所に入って刑罰を受けずに済むので、執行猶予がつくかどうかは重要なポイントとなります。殺人罪の場合、執行猶予については以下のようになっています。

(1)原則として実刑となる

執行猶予はどんな罪にもつくわけではありません。執行猶予がつくのは3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金が有罪判決として言い渡された場合に限られます。

殺人罪の法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」であり、最低ラインの3年を超えています。そのため、殺人罪では執行猶予がつかず実刑となるのが原則です。

(2)執行猶予がつくための条件

もっとも、殺人罪では絶対に執行猶予がつかないのかというと、そういうわけでもありません。

刑法では、法定減刑や酌量減刑という制度が認められており、減刑がなされて3年以下の懲役になれば執行猶予がつく可能性が出てきます。

法定減刑

刑法では、法律上減刑される事由が定められています。法定減刑の事由としては、過剰防衛(刑法36条2項)、緊急避難(37条1項但書)、心神耗弱(39条2項)、自首・首服(42条)、中止犯・未遂犯(43条)、従犯(63条)があります。

酌量減刑(刑法66条)

法律上の減刑事由はないものの、「犯罪の情状に酌量すべきものがあるとき」は、酌量減刑として減刑が認められることがあります(刑法66条)。

もっとも、酌量減刑は、必ず減刑されるものではなく、裁判官の裁量で減刑されうるに過ぎないため(任意的減刑)、しっかりとした弁護活動が必要となります。

(3)執行猶予を得るためにできること

執行猶予の獲得を目指すには、法律上の減刑事由や酌量減刑に該当する事由を主張していくこととなります。

多くのケースでは酌量減刑を求める活動が中心となり、そのためには犯罪の情状に酌量すべきものがあることを裁判官に理解してもらわなければなりません。

そのため、被告人が深く反省していること、減刑すべき事情を証言してくれる情状証人に出廷してもらうこと等、積極的な活動が必要となります。

6、万が一、殺人罪に問われたときは弁護士に相談を

殺人罪は法定刑が重く、基本的には執行猶予がつかない犯罪です。万が一、殺人罪に問われたときは早急に弁護士に相談をするようにしてください。

殺人罪は被害者が存在する犯罪ですから、弁護士に相談・依頼をすることで、被害者やその家族との話し合い・示談金の支払い、犯罪の情状に酌量すべきものがあることを示す弁護活動等、少しでも刑罰が軽くなるよう弁護士に弁護活動を進めてもらうことができます。

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