近年、さまざまなハラスメント行為が問題視されています。
今回はモラルハラスメントについて、モラハラの意味や加害者の特徴、モラハラにあたる具体的な行動や態度、モラハラ被害に遭った場合の具体的な対処方法を解説していきます。
1、モラハラとは?
そもそも、モラハラとはどのような意味なのでしょうか?
(1)モラハラ(モラルハラスメント)の意味
モラルとは「倫理や道徳」、ハラスメントは「嫌がらせ」といった意味ですから、「倫理や道徳に反した嫌がらせ」という意味です。
具体的には、相手を無視したり暴言を吐いたり、にらみつけたり、嫌みを言ったり嫌がらせをしたり、馬鹿にしたりして相手を貶めたり不機嫌にふるまったりする言動をとることです。
家庭や職場といった閉鎖的な空間・関係性において、物理的な暴力を振るうのではなく、陰湿な嫌がらせ行為によって相手を精神的に攻撃し、追い詰めるという点に特徴があります。
「大人のいじめ」のようなイメージであると言うと、わかりやすいかもしれません。
なお、モラハラは「夫から妻」、「上司から部下」に対して行われるケースが目立ちますが、モラハラの定義に性別や立場による区別はありません。
実際にも、「妻から夫」、「部下から上司」に対するモラハラが行われているケースもあります。
夫のモラハラで悩んでいる方は、こちらの記事をご覧ください。
妻のモラハラで悩んでいる方は、こちらの記事をご覧ください。
(2)モラハラ加害者の特徴
モラハラ加害者の特徴として、被害者との関係で「優位性」をもっていることが挙げられます。
家庭では経済的に養っている側(夫、父親等)、職場では権力をもっている側(上司、経営者から可愛がられている者等)、友人間では人気者やお金持ちの人などがモラハラ加害者になりやすいといえます。
モラハラは、ある意味「性格」です。先天的な場合もあれば、後天的にそうなった可能性もあるでしょう。
ただ、どちらにせよ、成人した加害者にとってそれは「性格」に他なりません。自分を優位に立たせることを常に意識する性格です。
優位な立場に立ってからモラハラ加害者としての性格が出現した人もいますが、もともとそのような気質を持ち、世の中で何が強いとされているのかを本能的に察知し、強者になるよう努力してきた人も少なくありません。
また、モラハラ行為は大抵の場合、モラハラ被害者との関係性においてのみ強く発動するという特徴もあります。
モラハラ加害者は自分を優位に立たせることを常に考え、巧妙に優位性を組み立ててきます。そのような発想がない被害者では歯が立ちません。
とはいえ、広い社会において常に優位でいられることはありません。
優位でない関係性においては酷く低姿勢であることも特徴的です。
ですから、常に優位でいられる相手を好み、友人関係を構築したり、配偶者を選んだりするのです。
具体的な特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
自己中心的で少しでも気に入らないと不機嫌になる
プライドが高く、他人を下に見る
他人の気持ちを理解できず、平気で嘘をつく
自分が正しいと思い込み、絶対に謝らない
価値観を共有できず、コミュニケーションが一方通行
思いやりの精神が乏しく、一人で物事を決める
ただ、男性と女性では少し異なる特徴もあります。
男性のモラハラでお悩みの方は、こちらの記事をご参照ください。
女性のモラハラでお悩みの方は、こちらの記事をご参照ください。
2、モラハラにあたる具体的な行動・態度
ここでは、モラハラにあたる具体的な行動や態度を挙げていきます。
ご自身がモラハラ被害者になっているかどうかを判断するための参考になさってください。
家庭でのモラハラと職場でのモラハラでは、やや趣が異なりますので、それぞれについて解説します。
(1)家庭編
家庭でのモラハラは、夫婦という一対一の関係性において行われることから、陰湿な嫌がらせ行為が際限なく続けられやすい一方で、依存的な関係性が強いという特徴もあります。
相手に対して優位性を見せつけようとして、「お前は役に立たない」「ダメなやつだ」などと人格を否定するような暴言を吐いたりします。
夫から妻に対しては家事・育児の苦労を理解せず「誰のおかげで生活していると思っているんだ」などと責め、妻から夫に対しては学歴や職歴、能力などで弱点を指摘して見下す発言をすることが多いです。
相手を無視することも、人格否定の一種であるといえます。
それでいて、モラハラ夫(妻)はパートナーに対して精神的に依存しているところがあります。
些細な失敗を責め続けたり、ネチネチと嫌みを言ったり、相手を束縛して行動を監視したがるのは、依存性の表れであるといえるでしょう。
また、モラハラ加害者はプライドが高いため、自分の非を認めず、価値観を押しつけてくることが多いものです。
家庭内で一般的によくあるモラハラ行為としては、以下のようなものが挙げられます。
妻(夫)をとことん貶める
暴力を振るわず、暴言を吐く
相手を認めない
平気で嘘をつく
自分の間違いを認めない
妻(夫)を異常に束縛する
子どもに妻(夫)の悪口を吹き込んで、洗脳する
細かい、欲が深い
(2)職場編
一方、職場でのモラハラ行為は一対一の関係性で行われることもありますが、多くの場合は他の従業員など複数の人がいる状況で行われます。
職場の皆がいる場でことさらに相手を怒鳴るなどして辱めたり、周囲から孤立させるなどのモラハラ行為が行われやすいことが特徴的です。
また、リストラや減給、降格などのペナルティーをちらつかせて脅すなどのモラハラ行為によって、優位性を見せつけることもあります。
相手を無視したり、仕事のやり方や結果ではなく本人の性格や容姿を責めるなど人格を否定する発言も多くあります。
職場で一般的によくあるモラハラ行為としては、以下のようなものが挙げられます。
無視をする
チームから仲間はずれにする
陰口を言う
誹謗中傷する
馬鹿にしたような視線を送る
冷笑する
仕事に必要な情報を与えない
過小な業務しか与えない
プライベートに介入してくる
職場においては、モラハラ以外に「パワハラ」が発生することもあります。
職場でのパワハラとは、厚生労働省では以下のように定義されています。
同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為
パワハラとモラハラの違いは、パワハラが職場における地位や権力、能力などの力関係を背景として威圧的な嫌がらせ行為を行うものであるのに対して、モラハラは力関係を背景とせず、個人対個人の関係性において精神的な嫌がらせ行為を行うものであるということです。
また、職場ではモラハラと業務上必要で有益な「注意」や「指導」との違いにも注意する必要があります。
注意や指導は、あくまでも相手の成長を促すことや、職場の秩序を保つなどの目的で行われるものであり、人格攻撃などを伴うことはありません。
それに対して、モラハラは相手を自分の思いどおりにするため精神的に攻撃するという違いがあります。
適正な注意や指導を受けた場合にも精神的に傷つくことはありますが、いわれのない人格攻撃を伴うような行為はモラハラに該当します。
なお、職場では顧客から「カスタマーハラスメント」というモラハラ行為を受けることもありますが、この問題については別の記事で解説していますので、併せてご参照ください。
配信: LEGAL MALL