養育費に関する裁判とは?【状況別】裁判請求手続きの流れを詳しく解説

養育費に関する裁判とは?【状況別】裁判請求手続きの流れを詳しく解説

3、これから離婚する人が裁判で養育費を請求する手続きの流れ

ではここから、実際に裁判で養育費を請求する手続きの流れをご紹介します。

まずは、これから離婚する人がパートナーに養育費を求めたい場合の手続きをみていきましょう。

(1)離婚調停を申し立てる

まだ離婚が成立していない人の場合は、家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立てて、この調停の中で養育費も請求することになります。

離婚問題については、まず調停を申し立てなければならないこととされているので、いきなり審判や離婚訴訟を起こすことはできません。

(調停前置主義)

第二百五十七条 第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。

引用元:家事事件手続法

調停とは、家庭裁判所において男女1名ずつの調停委員を介して相手方と話し合う裁判手続きのことです。

調停委員が中立・公平な立場でアドバイスや説得を交えて話し合いを進めてくれるので、当事者だけで話し合うよりも合意に至りやすくなるというメリットがあります。

離婚調停の場合、養育について合意できても、慰謝料や財産分与など他の争点について合意ができなければ解決できないことに注意が必要です。

 

(2)調停が不成立となったら離婚訴訟を起こす

離婚調停がまとまらない場合は、離婚審判の手続に移行する場合もありますが、一般的には離婚訴訟に進みます。

なぜなら、審判に移行した場合は、調停委員から勧められた調停案どおりの(または近い)内容の審判が下る可能性が高く、また当事者から異議が出た場合、訴訟に移行するため実効性に乏しいからです。

調停案に納得できない当事者が、自分の主張を裁判所に認めてもらうためには、強力な証拠を提出するなどして徹底的に争う必要があります。

そのため、調停で決裂した場合には通常、離婚訴訟を起こした方がよいでしょう。

(3)主張と証拠を提出し合う

離婚訴訟では、家庭裁判所で離婚問題について、通常の訴訟と同じルールのもとに当事者が主張や証拠を出し合います。

最終的に、自分の主張を裏づける事実を証拠で証明できた側が勝訴判決を獲得することになります。

証拠がなければ訴訟で勝つことはできませんので、養育費についてパートナーとの話し合いがまとまらないと思ったら、早い段階で証拠を集めておくことが大切です。

(4)証人尋問・本人尋問が行われる

原告と被告の双方が主張と証拠書類を出し尽くしたら、証人尋問と本人尋問が行われます。

証人と本人の法廷での供述も証拠となりますので、有力な証人を立てるとともに、本人尋問では自分の主張に矛盾がなく正当なものであることを裏づける事実をしっかりと述べることが重要となります。

(5)途中で和解が成立することもある

訴訟では、判決が言い渡される前に裁判所から和解を勧められ、話し合いが行われることもよくあります。

和解を勧められるタイミングとしては、主に証人尋問・本人尋問の前と後です。

当事者の主張と証拠書類が出そろうと、裁判官はすでに判決内容についておおよその心証を固めているものです。

そのまま尋問を行って判決言い渡しに進んでもよいのですが、できることなら当事者双方が納得できる解決を図る方がベターであるため、尋問前に和解を勧められることが多いのです。

尋問が終了すると、裁判官はほぼ完全に心証を固めています。

ただ、最後にもう一度、柔軟な解決を図るために和解を勧めてくるケースが多いです。

これらのタイミングで、納得できる和解案を示され、パートナーも合意する場合には和解に応じるのもよいでしょう。

(6)和解できなければ判決が言い渡される

和解が成立しない場合は、尋問終了後に当事者双方が最終的な意見をまとめた書面を提出して結審し、判決が言い渡されることになります。

判決で決められる養育費の金額は、やはり養育費算定表に掲載されている金額の範囲内となることがほとんどです。

そのため、養育費算定表を超える金額を求める場合は、その金額と根拠を主張し、有力な証拠を提出しておく必要があります。

なお、判決で養育費を獲得できるのは、離婚を求める側が勝訴したときだけです。

敗訴するとそもそも離婚が認められませんので、養育費について裁判所の判断は下されません。

したがって、パートナーが離婚そのものに反対している場合には、相手の離婚原因についても主張と証拠を提出しておかなければなりません。

 

4、すでに離婚した人が裁判手続きで養育費を請求する流れ

すでに離婚した人が養育費を請求するための裁判手続きは、調停と審判のみです。訴訟はありません。

(1)養育費請求調停を申し立てる

まずは、家庭裁判所に「養育費請求調停」を申し立てましょう。

離婚調停の場合と異なり、養育費を請求するのみの場合は調停前置主義は適用されませんので、いきなり審判を申し立てることも可能です。

しかし、いきなり審判を申し立てても、ほとんどの場合は「まずは話し合ってみましょう」という家庭裁判所の判断で、調停に付されることになります。

そのため、通常は調停を申し立てた方がよいでしょう。

(2)調停不成立の場合は養育費請求審判に移行する

養育費請求調停で話し合いがまとまらず、調停不成立となった場合は、自動的に審判の手続きへ移行します。

審判では、調停段階で当事者が提出した主張や証拠、家庭裁判所調査官による調査結果などに基づいて、裁判所が相当と考える解決方法を命じます。

新たに主張や証拠を提出することもできるので、できる限り提出するようにしましょう。

なお、家庭裁判所が下した審判の内容に納得できないときは、異議申し立てと即時抗告の手続きをとることによって、改めて審理をしてもらうことができます。

ただし、一度下された審判を覆すことは簡単ではないので、弁護士に依頼した方がよいでしょう。

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