3、大麻初犯で実刑になるケースの特徴とは
前述のように、大麻取締法違反の初犯は懲役6ヶ月~2年で、執行猶予がつくことが多いです。
そのため、多くの方は「初犯だから実刑から免れることができる」と安心しがちです。
ただし、これは大麻初犯だからといって100%実刑にならないというわけではありません。
では、大麻初犯ではどのようなケースで実刑判決が下されることがあるのでしょうか?
この疑問に対する回答ですが、主には「所持していた大麻の量が非常に多く、かつ営利目的」などのケースが該当します。
先ほども解説したように大麻取締法違反は、個人使用目的よりも営利目的のほうが罰則が重くなりやすいです。
これに加えて大量の大麻(例:栽培20本、乾燥大麻約3㎏など)を所持していた場合は、「営利目的」「所持」「譲渡」「栽培」などの容疑が疑われますから、初犯から実刑判決が下される可能性もあります。
また、大麻に関しては初犯でも、過去に他の薬物等に関して同種の前科前歴があると再犯のおそれがあると判断される可能性が高まり、情状が悪くなりやすいでしょう。
もちろん十分な証拠が揃っているのにもかかわらず容疑を否認したり、反省の色が見られなかったりした場合も量刑が重くなる可能性は高くなります。
4、大麻初犯で逮捕されたら
仮に家族が大麻初犯で逮捕されたら、他の家族はその事実を知った瞬間からスピーディーな行動を心がけましょう。
一般的に刑事事件における逮捕後の流れというのは、以下のようになっています。
逮捕後の流れ
拘束期間
逮捕~検察庁送致
48時間以内
送致~勾留請求
24時間以内
勾留
10日間~20日間
起訴後の勾留(なしの場合もあり)
第一審の判決が下されるまで(単純所持であれば約2ヶ月ほど)
大麻初犯で逮捕されたときに最も大事なのが、逮捕から勾留までの最大23日間の対応です。
逮捕、勾留された場合、一般的には起訴、不起訴の判断が下されるのが上記の最大23日間の期間となるためです。
よってこの期間に弁護士をつけ、不起訴処分の確率を少しでも高めることが大切です。
一般的に弁護士をつけることの意味や具体的なメリットは、以下のとおりです。
(1)早期釈放を目指し社会生活に支障をきたさない
弁護士をつけるメリットは、
早期釈放を目指せること
そして
その結果として社会生活に支障をきたさずに済むこと
などが挙げられます。
大麻初犯で逮捕されると、まずは警察による取り調べ、そして検察に身柄を送る(いわゆる送検)という流れです。
送検が決定されると検察官が24時間以内に、勾留の必要性があるか否かを判断しなければなりません。
前述のように勾留は最短10日、最大で20日間となりますので、仮に勾留が決定されると学校や仕事を休む必要があり、最悪の場合は退学や退職処分が下される可能性もあります。
この不利益を避けるには、警察や検察による取り調べにおいて勾留の要件を満たさないことを主張する必要があります。
具体的には「逃亡の危険性があるか否か」「証拠隠滅のおそれがあるか否か」などです。
逃亡の危険性については、家族がある会社員や住所など身元がはっきりとしている学生であれば、逃亡の危険性が低いと主張しやすいと考えられます。
一方、大麻犯などの薬物犯罪では、薬物自体は比較的隠滅しやすいものであることや、余罪があることの多い犯罪類型であることなどから、一般に罪証隠滅のおそれが認められやすいと考えられます。
そのため、罪証隠滅のおそれがないことを主張するには、罪証隠滅をさせないよう監督することを誓約してくれる方を探すなどして、罪証隠滅のおそれがないといえる根拠を具体的に主張していくことが重要になります。
一般的には警察による取り調べが48時間以内、検察官による勾留の有無決定が24時間以内ですので、仮に釈放が決定された場合は72時間以内で身柄の拘束が解かれることになります。
つまり勾留なしと決定された時点で、ただちに釈放手続きがなされ、自宅に帰ることができます。
法律知識に乏しい被疑者の場合は、警察や検察官の取り調べにおいてどのような対応をすればよいかわかりません。
しかし、法律の専門家である弁護士をつけると、主張すべきポイントなどを教えてもらうことができますので、社会生活に悪影響を及ぼさない範囲での釈放も可能となります。
(2)不起訴を目指し前科をつけない
前述の起訴、不起訴のデータでも取り上げましたが、大麻取締法違反の不起訴率は約50%です。
これは覚せい剤など他の薬物関連と比較すると、高い割合です。
よって大麻事件の場合は、事案の内容次第では不起訴を目指せる可能性も十分にあります。
不起訴を目指すためには、どのような場合に不起訴とされるのかを知ることが大切です。
前述の「2、起訴されるケースの特徴とは」の中で、不起訴と判断される要因を記載していますので、こちらを参考にしてみてください。
(3)起訴されても執行猶予を獲得し社会生活をする中での更生を目指す
起訴が決定されると、約1ヶ月~1ヶ月半ほどで刑事裁判が開かれます。日本の刑事裁判の有罪率は99%を超えるともいわれているため、起訴されると有罪判決、そして前科がつく可能性は高いです。
ただし、大麻初犯の場合は、有罪判決を受けても比較的高い確率で執行猶予がつくことが多いため、起訴後は執行猶予獲得を目指す対応に切り替えるようにしましょう。
執行猶予とは有罪判決を受け、懲役が確定しても一定期間だけ刑の執行が猶予されることをいいます。
一例ですが懲役1年、執行猶予3年の場合は、刑務所に行くことなく釈放され、3年間執行猶予判決の取消しを受けずに過ごせば懲役1年の刑の執行を受けることはなくなります。
執行猶予判決が取り消される理由としては、執行猶予期間中に再度罪を犯したことが挙げられます。
仮に執行猶予期間中に、何かしらの罪を犯してしまった場合は、その罪の刑罰および大麻初犯で猶予されていた分の刑罰を合わせて科せられることになります。そのため、大麻初犯で執行猶予付き判決を受けても、数年間は油断することができません。
しかし、更生方法を考慮すると、刑務所よりも実際の社会生活のほうが大きな効果を見込むことができます。
弁護士はご家族と裁判に向けた打ち合わせをしたり、裁判後の入所先(薬物依存治療施設など)を確保したりするなど、執行猶予付き判決を目指すように務めてくれます。
よって、刑事事件や大麻事件に強い弁護士に依頼するというのは、社会生活での更生を目指す上では重要なポイントとなります。
配信: LEGAL MALL