封入体筋炎の治療
封入体筋炎は、現時点では有効な治療法は見つかっていません。そのため、できるだけ長く自分の力で動けるようにすること、日常生活の質を保つことを目標に治療が進められます。
リハビリテーション
封入体筋炎では、リハビリテーションが治療の中心となります。理学療法士や作業療法士の指導のもと、筋力を維持するための運動や、日常生活の動作を工夫する方法を学んでいきます。
例えば、手の力が弱くなってきた場合は太めのペンを使う、食器を持ちやすい形のものに変える、といった工夫を教えてもらいながら練習します。また、転倒を防ぐための歩き方や、安全に階段を昇り降りする方法なども練習します。
薬物療法
痛みがある場合には、痛み止めの薬を使用することがあります。ただし、他の筋肉の病気でよく使われるステロイド薬や免疫抑制薬は、封入体筋炎ではあまり効果が期待できません。長期使用による副作用のリスクもあるため、使用は慎重に検討されます。
生活環境の整備
生活環境の整備も重要です。手すりの設置や段差の解消など、自宅での安全な移動を確保するための工夫が必要になることがあります。また、必要に応じて杖や歩行器などの補助具を使うことも検討します。
リハビリテーションと並行して、理学療法士や作業療法士の意見を聞きながら、患者さんに合った生活環境を整備していく必要があります。
封入体筋炎になりやすい人・予防の方法
封入体筋炎は50歳以上の中高年、特に男性に多く見られる病気です。しかし、現時点では発症を予防する確実な方法は見つかっていません。
遺伝子の違いが発症に関係している可能性がありますが、家族内で発症することは珍しく、どのような人がなりやすいのかについても、まだ十分には分かっていません。
なお、一般的な健康維持法として、バランスの良い食事を心がけ、適度な運動を続けることは大切ですが、これらが封入体筋炎の予防に直接つながるという根拠は今のところないのが現状です。
関連する病気関節リウマチ全身性エリテマトーデス多発性筋炎
皮膚筋炎
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
重症筋無力症
パーキンソン病
参考文献
日本神経学会「封入体筋炎 診療の手引き 2023 年 改訂版」
難病情報センター「封入体筋炎(指定難病15)」
独立行政法人 国立病院機構 宇多野病院「炎症性筋疾患のポイント―多発性筋炎・皮膚筋炎を中心に」
配信: Medical DOC
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