未破裂脳動脈瘤の治療
未破裂動脈瘤の治療は、破裂を予防することを目的としておこなわれます。どういった治療を選択するのかは、脳動脈瘤のサイズなどからわかる破裂の危険性をもとに、患者さんごとに異なるリスク要因も考慮して慎重に決められます。
未破裂動脈瘤の治療方法は主に以下の3つです。
慎重な経過観察
脳動脈瘤の大きさが5mm未満の場合など、破裂の危険性がそれほど高くないと判断された場合は、慎重な経過観察をとることがあります。
ただし、大きさが5mm未満であっても、すでに自覚症状が現れているケースや、脳動脈瘤の数、位置、形状などから危険性が高いと判断されるケースでは、別の治療法が検討されます。経過観察では定期的な画像検査をおこない、脳動脈瘤が大きくなっていないか、新たな脳動脈瘤が発生していないかなどを、しっかりと確認します。
経過観察中は医師の指導のもとで慎重にリスク管理をおこない、必要に応じて、血圧をコントロールするための薬物療法などもおこないながら、脳動脈瘤の破裂の危険性が高まらないようにします。
一度できた脳動脈瘤は基本的に自然治癒することはないため、経過観察をしながら他の治療法の適用についても考える必要があります。その際は、患者の年齢や健康状態など、さまざまな要素をじゅうぶんに考慮する必要があり、担当医師が患者やその家族とよく相談したうえで検討されます。
外科的手術(開頭クリッピング術)
脳動脈瘤の外科的手術では、開頭クリッピング術と呼ばれる手術がもっともよく知られています。
開頭クリッピング術は、チタンなどでできたクリップ(小さな洗濯ばさみのような形状の器具)を用いて、脳動脈瘤を挟みこみ、瘤を消失させる手術です。
適用範囲が広く、ほぼ全ての脳動脈瘤に対する治療が可能なこと、緊急性の高い場合にも適用できることなどがメリットです。
一方で、全身麻酔による比較的長時間の手術が必要となることや、患者の頭蓋骨の一部を切り取ったり、穴をあけたりする必要があることなど、手術時に患者への身体的な負担が大きいことがデメリットです。
血管内治療
血管内治療は、患者の血管内にごく細いカテーテルを通し、コイル、ステント、バルーンといった特殊な形状の器具を脳動脈瘤付近に設置(留置)して、脳動脈瘤を消失、あるいは破裂の危険性を下げる手術です。
脳動脈瘤における血管内治療でもっとも代表的なものは、コイル塞栓術です。コイルと呼ばれるごく細い金属製の器具で動脈瘤の内部を満たし塞いでしまうことで、動脈瘤の中に血液が流れ込まないようにします。
他にも、ステントと呼ばれる金属製の筒形の網で血管を補強する手法や、バルーンと呼ばれる器具を使う手法など、さまざまな治療法が開発されていて、血管内治療では、一度に複数の手法を組み合わせておこなうこともあります。
血管内治療は外科的手術よりも低侵襲(患者の身体への負担が少ない)であることが大きなメリットですが、必ずしも全ての症例に適用できるわけではありません。また、開頭クリッピング術に比べると、治療に成功しても再発のリスクがやや高いとされているため、術後も慎重な経過観察が必要になります。
未破裂脳動脈瘤になりやすい人・予防の方法
脳動脈瘤の発症原因がはっきりとはわかっていないため、未破裂脳動脈瘤になりやすい人を断定することはできません。
ただし、脳動脈瘤の原因として挙げられている要素を持つ人は、この病気の発症リスクがやや高まると考えられます。
すなわち「生活習慣が乱れがちな人」「遺伝的背景(家族に発症例がある)を持つ人」「生活習慣病等の既往歴を持つ人」「高齢者や女性」は定期的な検査を受け、未破裂脳動脈瘤の早期発見に努めることが推奨されます。
未破裂脳動脈瘤はそれほどまれな疾患ではなく、誰にでも起こり得る病気ですので、脳動脈瘤が発見されないまま大きくなったり、破裂したりするリスクを予防するという観点から、脳ドックなどの検査を受けることは有効といえるでしょう。
「喫煙や過度の飲酒を控える」「適度な運動を取り入れる」「食生活や睡眠など、健康的な生活習慣の維持を心がける」「過度なストレスを避ける」といった日常的な行動も、脳動脈瘤の発症予防につながります。
参考文献
脳動脈瘤|国立研究開発法人国立循環器病研究センター
脳卒中治療ガイドライン2021[改定2023]
未破裂脳動脈瘤|京都大学医学部付属病院脳神経外科
https://www.akita-noken.jp/general/sick/brain-nerve/page-2060/
配信: Medical DOC
関連記事: