近視などの治療選択肢として、「ICL」や「レーシック」という方法が挙げられます。一体、どのような違いがあるのかご存じですか? それぞれのメリット・デメリットや安全性などを、「水天宮藤田眼科」の藤田先生に解説していただきました。
監修医師:
藤田 浩司(水天宮藤田眼科)
獨協医科大学卒業。東京医科大学眼科入局。その後、船橋市立医療センター眼科医長、日本通運健康保険組合東京病院眼科部長などを務める。2000年、東京都中央区に「水天宮藤田眼科」を開院。医学博士。日本眼科学会認定眼科専門医、公益社団法人日本眼科医会代議員。日本眼科手術学会、日本白内障学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本コンタクトレンズ学会、日本眼感染症学会。
ICLとは?
編集部
まず、ICLについて教えてください。
藤田先生
ICLとは眼内コンタクトレンズとも言われ、目の中にコンタクトレンズを挿入して、視力を矯正する治療法です。国内外で多くの実績があり、現在ではたくさんの人が治療を受けています。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
藤田先生
目の中に特殊なコンタクトレンズを挿入することで近視や乱視などを矯正し、視力の回復を目指します。同じく、視力を矯正する治療法にレーシックがありますが、じつはレーシックが初めて報告されるよりも早くに、ICLは開発されています。
編集部
ICLはレーシックとどう違うのですか?
藤田先生
レーシックの場合は、角膜を削って視力を矯正します。その一方、ICLは角膜を削る必要がありません。そのため、一度コンタクトレンズを埋め込んでも、将来的に老眼や白内障が出て度数が合わなくなった場合などにはレンズを取り出し、元の状態に戻すことができます。
編集部
レーシックとは異なるメリットがあるのですね。
藤田先生
はい。そのほか、将来的により優れた手術法が出た場合には、コンタクトレンズを取り外して元の状態に戻すことができるのもICLの利点です。
ICLとレーシックの違い
編集部
角膜を削らないこと以外で、ICLとレーシックにはどのような違いがあるのでしょうか?
藤田先生
レーシックだと角膜が非常に薄い場合には手術ができないなど、角膜の厚さによって治療の可否が左右されます。また、強度近視や強度乱視の場合、レーシックは不適応とされています。しかし、ICLにはそうした制限がなく、強度近視や強度乱視でも受けることができます。
編集部
そのほかにも、違いはありますか?
藤田先生
ICLは角膜を削らないため、角膜の歪みが増えることがなく、鮮やかでクリアな見え方が期待できます。また、レーシックは夜間に見えづらくなったり、光が滲んだりギラギラして見えたりする「ハロー・グレア」という現象が起きることもありますが、ICLの場合にはそうした心配が少ないとされています。
編集部
ICLには様々なメリットがあるのですね。
藤田先生
そのほかにも、ICLは角膜の知覚神経を傷つけることが少なく、ほとんどドライアイにならなかったり、ICL治療は近視のリバウンドが起こらなかったりするメリットがあります。
編集部
目の中に入れたコンタクトレンズは、手入れが必要なのですか?
藤田先生
いったん目の中に入れたレンズは汚れがつくことはなく、日々の手入れやメンテナンスは不要です。コンタクトレンズがゴロゴロするといった違和感もありません。特に、災害が起こった際も、メガネやコンタクトレンズが不要で裸眼で生活をすることができるため安心です。
配信: Medical DOC