「ジスキネジア」がなぜ起こるのかご存知ですか? 原因・症状を医師が解説

「ジスキネジア」がなぜ起こるのかご存知ですか? 原因・症状を医師が解説

監修医師:
大坂 貴史(医師)

京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

ジスキネジアの概要

ジスキネジアは、意図しない異常な不随意運動を引き起こす神経疾患の一種です。具体的には、体の一部が勝手に動いてしまう現象であり、無秩序な動きやねじれたような動きが特徴です。この運動障害は、特定の脳の領域や神経伝達に異常が生じた結果として発生します。ジスキネジアは、主に遅発性ジスキネジアとレボドパ誘発性ジスキネジアの2つのタイプに分類されます。
遅発性ジスキネジアは、長期間にわたる抗精神病薬やドーパミン拮抗薬の使用が原因で発症し、特に口や顔面の筋肉が影響を受けます。
レボドパ誘発性ジスキネジアは、パーキンソン病患者がレボドパという薬物治療を受ける際に副作用として現れることが多いです。このタイプのジスキネジアは、手や足、顔など、さまざまな部位に不随意運動を引き起こします。
ジスキネジアは一度発症すると、日常生活に支障をきたす場合があり、患者にとって精神的にも身体的にも負担となります。治療や管理は困難な場合もあり、原因に応じた適切な治療が重要です。

ジスキネジアの原因

ジスキネジアは、脳内の神経伝達物質の不均衡や薬物の使用によって引き起こされることが多いです。特にドーパミンという神経伝達物質の働きが影響を受けることが多く、その調整が乱れると異常な運動が生じることがあります。

長期的な薬物使用
抗精神病薬

遅発性ジスキネジアの主な原因は、抗精神病薬の長期使用です。これらの薬は、ドーパミン受容体を抑制する作用があるため、長期間服用すると脳内のドーパミン伝達が過剰に抑制され、結果として逆にドーパミンの過剰反応が引き起こされます。この状態が、不随意運動であるジスキネジアを引き起こします。特に、第一世代の抗精神病薬(典型抗精神病薬)は、遅発性ジスキネジアのリスクが高いとされています。

レボドパ

レボドパは、パーキンソン病の治療に使われる薬剤で、ドーパミンを補充する役割を果たします。しかし、長期にわたって使用すると、脳内でのドーパミンのレベルが変動し、異常な運動が発生することがあります。これをレボドパ誘発性ジスキネジアと呼び、パーキンソン病の患者に見られる副作用の一つです。

脳の損傷や変性

ジスキネジアは、脳の基底核や視床、黒質など、運動を制御する部分が損傷を受けることでも発生します。これらの領域は、運動の滑らかさや意図的な動きを調整する役割を持っているため、損傷を受けると不随意運動が生じます。

神経疾患

ジスキネジアは、パーキンソン病やハンチントン病など、神経変性疾患の一環として現れることもあります。これらの疾患では、神経細胞が徐々に死滅し、運動を制御する機能が低下するため、異常な運動が発生します。

ドーパミン受容体の感受性変化

ドーパミン受容体の感受性が変化することも、ジスキネジアの原因となることがあります。特に、薬物治療や長期にわたる神経伝達の異常が、ドーパミン受容体の反応性を変化させ、ジスキネジアを引き起こします。