寒冷凝集素症の治療
寒冷凝集素症では、現時点だと根治可能な薬物療法はないため、症状の軽減と進行予防を目的として治療が行われます。
体温管理
重篤な症状のない寒冷凝集素症の基本的な治療は、体温管理です。
冷えた環境を避け、冬場や冷え込みの強い場合は、徹底的に保温します。具体的には、手袋やマフラー、帽子を使って、手足や耳、鼻先などが冷えないように保護します。また、室内では暖房器具を積極的に活用したり、就寝している際に冷えないように寝具を調整したりなど、体温が下がらないようにすることが重要です。
薬物療法
重症例では、ステロイド薬が用いられることがあります。自己免疫反応を抑え、赤血球が攻撃されるのを抑制することが目的です。
しかし、生命の危険を脅かすような状態を除いて、寒冷凝集素症に対するステロイド薬の投与は推奨されていません。理由としては、有効性が低いとされているうえ、ステロイド薬は糖尿病や気分障害、高脂血症などの副作用を引き起こすリスクがあるためです。
また、冷えた環境を避けて、体を温めても貧血症状がみられる場合は、その症状を抑える薬剤を服用することがあります。
輸血
重症例にて、薬剤での治療の効果があらわれるまで救命を目的として輸血も行われます。ただし、寒冷凝集素症の場合、体温が下がると赤血球が凝集しやすくなるため、輸血を行う際には、患者とドナーの手足に加え、血液も温めながら行います。
寒冷凝集素症になりやすい人・予防の方法
寒冷凝集素症は、高齢者に発症しやすい傾向があります。また、体温が下がったときに、血液中の赤血球が凝集し、さまざまな症状が生じるため、寒い環境で長時間過ごすことが多い人は注意が必要です。
寒冷凝集素症の発症を防ぐことは困難ですが、ある程度、症状が出るのを防ぐことは可能です。寒い場所にいる際は、手袋やマフラー、帽子などを使い、手足や耳、鼻先といった末端部分が冷えないようにしましょう。
また、室内でも暖房を適切に活用し、冷え込まないよう工夫をする、冷水での手洗いを避け、ぬるま湯や温水で手を洗うようにすることが予防につながります。
EBウイルス感染症
HIV/AIDS
慢性リンパ性白血病
自己免疫性溶血性貧血
全身性エリテマトーデス(SLE)
参考文献
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「自己免疫性溶血性貧血診療の参照ガイド令和4年度改訂版」
J-Stage「溶血性貧血:診断と治療」
難病情報センター「自己免疫性溶血性貧血(AIHA)(指定難病61)
熊本大学病院 輸血・細胞治療部「寒冷凝集素症」
配信: Medical DOC
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