「子宮復古不全」になるとどうなるかご存知ですか? 原因・特徴を併せて医師が解説

「子宮復古不全」になるとどうなるかご存知ですか? 原因・特徴を併せて医師が解説

監修医師:
佐伯 信一朗(医師)

兵庫医科大学卒業。兵庫医科大学病院産婦人科、兵庫医科大学ささやま医療センター、千船病院などで研鑽を積む。兵庫医科大学病院産婦人科外来医長などを経て2024年3月より英ウィメンズクリニックに勤務。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会健康スポーツ医、母体保護法指定医。

子宮復古不全の概要

子宮復古不全は、分娩後に子宮が正常なペースで収縮し、元の大きさに戻る過程(子宮復古)が遅延または不完全な状態を指します。正常な子宮復古では、分娩直後の子宮底は臍の高さにありますが、その後徐々に下降し、約6週間で妊娠前の大きさに戻ります。子宮復古不全では、この過程が遅れ、子宮が予想よりも大きいままとなります。
子宮復古不全の発生率は、研究によって異なりますが、おおよそ産後女性の5-10%程度と報告されています。この状態は、産後出血のリスクを高め、感染症や疼痛などの合併症を引き起こす可能性があるため、適切な診断と管理が重要です。
子宮復古不全は、単に子宮の収縮が不十分であるだけでなく、子宮筋層の再生や血管系の再構築など、複雑な生理学的プロセスの障害を反映しています。このため、その管理には多面的なアプローチが必要となります。

子宮復古不全の原因

子宮復古不全の原因は多岐にわたり、しばしば複数の要因が関与しています。主な原因として、子宮の過伸展、ホルモンバランスの乱れ、感染、そして機械的な要因が挙げられます。
子宮の過伸展は、多胎妊娠や巨大児、羊水過多などによって引き起こされます。過度に伸展された子宮筋は、分娩後に効果的に収縮する能力が低下する可能性があります。この状態は、子宮筋繊維の弾性が低下し、正常な収縮力を発揮できないことに起因します。
ホルモンバランスの乱れも重要な要因です。特に、オキシトシンの分泌不足や子宮のオキシトシンに対する感受性の低下が、子宮復古不全を引き起こす可能性があります。オキシトシンは子宮収縮を促進する重要なホルモンであり、その作用が十分でない場合、子宮の収縮が不十分となります。
感染も子宮復古不全の原因となり得ます。子宮内膜炎や産褥熱などの感染症は、子宮筋の収縮を妨げ、復古過程を遅延させる可能性があります。感染は炎症反応を引き起こし、これが子宮筋の正常な機能を阻害するのです。
機械的な要因としては、胎盤遺残や子宮内血腫の存在が挙げられます。これらは物理的に子宮の収縮を妨げ、また局所的な炎症反応を引き起こすことで、子宮復古不全を引き起こします。特に胎盤遺残は、子宮収縮を妨げるだけでなく、持続的な出血の原因ともなり得ます。
また、子宮筋腫や子宮奇形などの解剖学的異常も、子宮復古不全のリスクを高める可能性があります。これらの状態は、子宮筋の正常な収縮パターンを妨げ、効果的な復古を困難にします。
これらの要因が単独で、あるいは複合的に作用することで、子宮復古不全が引き起こされます。個々の症例では、これらの要因の組み合わせや相互作用が異なるため、適切な診断と個別化された管理が重要となります。

関連記事: