子宮復古不全の前兆や初期症状について
子宮復古不全の前兆や初期症状は、しばしば他の産後の合併症と重複するため、注意深い観察が必要です。以下に主な症状を説明します。
最も一般的な症状は、持続的な性器出血または多量の悪露です。正常な産褥期では、悪露は徐々に減少し、色も赤から褐色、そして白色へと変化していきますが、子宮復古不全では鮮血性の出血が持続したり、量が多くなったりすることがあります。
腹部の違和感や下腹部痛も重要な症状です。通常、産後の子宮収縮に伴う痛み(後陣痛)は徐々に軽減していきますが、子宮復古不全では持続的な痛みや不快感が続くことがあります。特に、子宮底の高さが予想よりも高い位置にとどまっている場合は注意が必要です。
発熱も子宮復古不全の症状の一つです。特に38度以上の発熱が持続する場合は、子宮内感染の可能性を考慮する必要があります。ただし、発熱は必ずしも子宮復古不全に特異的な症状ではないため、他の原因も同時に検討する必要があります。
悪臭を伴う腟分泌物も、子宮復古不全、特に感染を伴う場合の重要な徴候です。正常な悪露には特有の臭いがありますが、腐敗臭や強い悪臭がする場合は、医療機関への受診が必要です。
これらの症状は、産後の正常な経過でも一時的に現れることがあるため、その持続期間や程度が重要になります。特に、症状が悪化したり、長期間持続したりする場合は、子宮復古不全を疑う必要があります。
産後の女性やその家族は、これらの症状に注意を払い、異常を感じた場合は速やかに医療機関に相談することが重要です。早期発見と適切な管理は、子宮復古不全による合併症のリスクを減少させ、産後の回復を促進します。
子宮復古不全の検査・診断
子宮復古不全の診断は、主に臨床症状の評価と身体診察を基本とし、必要に応じて画像診断や検査室検査を組み合わせて行います。
以下に主な診断方法を説明します。
問診と症状評価
医師は患者の産後の経過、出血の量や性状、痛みの程度、発熱の有無などについて詳細に聴取します。また、妊娠・分娩歴や合併症の有無なども重要な情報となります。
身体診察
腹部触診:子宮底の高さを評価します。正常な子宮復古では、子宮底は日に約1-2cmずつ下降しますが、復古不全ではこの下降が遅れます。
腟鏡診:腟からの出血の量や性状、子宮頸管の状態を評価します。
双合診:子宮の大きさ、硬度、圧痛の有無を評価します。
超音波検査
経腹的または経腟的超音波検査を行い、子宮の大きさ、子宮内腔の状態、胎盤遺残の有無などを評価します。また、子宮内血腫や子宮筋層の厚さなども観察できます。
血液検査
血算:貧血の有無や程度を評価します。
炎症マーカー(CRP、白血球数):感染の有無や程度を評価します。
凝固機能検査:出血傾向の有無を評価します。
培養検査
感染が疑われる場合、腟分泌物や子宮内容物の細菌培養検査を行うことがあります。
MRI検査
複雑な症例や、超音波検査で評価が困難な場合に行われることがあります。子宮筋層の状態や胎盤遺残の詳細な評価に有用です。
診断基準としては、産後6週間以降も子宮が予想される大きさより明らかに大きい場合や、持続的な出血がある場合などが挙げられます。ただし、厳密な基準は確立されておらず、臨床症状と検査結果を総合的に評価して診断します。
子宮復古不全の診断では、他の産後合併症(例:産褥熱、子宮内膜炎、胎盤遺残など)との鑑別も重要です。これらの状態は症状が重複することがあり、適切な治療のためには正確な診断が不可欠です。
また、診断後も定期的な評価が必要です。子宮復古の進行状況を継続的にモニタリングし、治療効果を評価することが重要です。
配信: Medical DOC