子宮復古不全の治療
子宮復古不全の治療は、原因や症状の程度に応じて個別化されます。以下に主な治療方法を説明します。
子宮収縮薬の投与
オキシトシンやエルゴメトリンなどの子宮収縮薬を投与し、子宮の収縮を促進します。これらの薬剤は筋肉注射や静脈内投与で使用されます。投与量と期間は、症状の程度や反応に応じて調整されます。
抗生物質療法
感染が疑われる場合や確認された場合、適切な抗生物質を投与します。通常、広域スペクトラムの抗生物質が選択され、培養結果に基づいて適宜変更されます。
子宮マッサージ
外部から子宮底をマッサージすることで、子宮収縮を促進し、血液やその他の貯留物の排出を促します。
子宮内容除去術
胎盤遺残や大きな血腫がある場合、子宮内容除去術(掻爬術)が必要になることがあります。この処置は、超音波ガイド下で行われることが多く、残存組織を完全に除去することを目的としています。
子宮動脈塞栓術
持続的な出血が他の治療法で制御できない場合、放射線科的介入として子宮動脈塞栓術が選択されることがあります。この方法は、子宮を温存しつつ出血をコントロールできる利点があります。
子宮全摘出術
極めて稀ですが、他の全ての治療法が失敗し、生命を脅かす出血が持続する場合、最終的な選択肢として子宮全摘出術が考慮されます。
支持療法
貧血に対する鉄剤投与や輸血
疼痛管理のための鎮痛剤投与
適切な栄養補給と休息の確保
理学療法
骨盤底筋運動や腹部運動など、適切な運動療法が子宮復古を促進する可能性があります。
治療中は、子宮の収縮状態、出血量、全身状態を慎重にモニタリングします。治療効果が不十分な場合は、治療方針の再検討や他の治療法の追加を考慮します。
子宮復古不全になりやすい人・予防の方法
子宮復古不全になりやすい人
子宮復古不全のリスクは、様々な要因によって高まる可能性があります。リスク因子を理解し、可能な限り予防策を講じることが重要です。
子宮復古不全になりやすい人としては、まず多産婦が挙げられます。出産回数が増えるにつれて、子宮筋の弾性が低下し、効果的な収縮が難しくなる可能性があります。
また、高齢出産も一つのリスク因子です。年齢とともに子宮筋の機能が低下し、復古過程に影響を与える可能性があります。
多胎妊娠や巨大児出産の経験者も、子宮復古不全のリスクが高くなります。これは子宮の過伸展が原因で、分娩後の子宮収縮力が低下する可能性があるためです。同様に、羊水過多症の既往もリスク因子となります。
長時間の分娩や器械分娩(吸引分娩、鉗子分娩)を経験した女性も、子宮復古不全のリスクが高まる可能性があります。これらの状況では、子宮筋が疲労し、効果的な収縮が妨げられる可能性があります。
子宮筋腫や子宮奇形などの解剖学的異常を持つ女性も、子宮復古不全のリスクが高くなる傾向があります。これらの状態は、正常な子宮収縮パターンを妨げる可能性があります。
予防の方法
予防方法としては、まず妊娠中からの適切な健康管理が重要です。適切な栄養摂取、適度な運動、禁煙などの健康的な生活習慣を維持することで、分娩後の子宮復古を促進する基盤を作ることができます。
分娩中および分娩直後の適切な管理も重要です。特に、第三期(胎盤娩出期)の積極的管理が推奨されます。これには、オキシトシンの予防的投与、控えめな臍帯牽引などが含まれます。これらの方法により、分娩後出血のリスクを軽減し、子宮復古を促進することができます。
産後は、早期離床と適度な運動が推奨されます。これにより血液循環が促進され、子宮復古が促進されます。また、授乳も子宮復古を促進する効果があるため、可能な限り推奨されます。
定期的な産後健診の受診も重要です。これにより、子宮復古の進行状況を専門家が評価し、必要に応じて早期介入を行うことができます。
感染予防も重要です。適切な衛生管理、特に会陰部の清潔維持や、傷の適切なケアが必要です。また、不必要な腟内診察を避けることも感染リスクの低減につながります。
これらの予防策を実践することで、子宮復古不全のリスクを軽減できる可能性がありますが、完全に予防することは困難です。そのため、症状に注意を払い、異常を感じた場合は速やかに医療機関に相談することが最も重要です。早期発見と適切な管理により、子宮復古不全による合併症のリスクを最小限に抑えることができます。
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配信: Medical DOC
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