骨肉腫の診断方法
骨肉腫はまれな疾患であるために正確な診断までに時間がかかることがあります。
また良性や悪性の鑑別が難しいケースもあります。痛みや腫瘍・骨の異常がある場合には、決して受診をためらわないでください。
問診
診断の際には、以下の内容を問診します。
年齢
発生した時期
発生した場所
日内で痛みの変動はあるか
年齢
臨床症状
現病歴と既往歴
骨の腫脹・腫瘤が見られる疾患は多く、腫瘍性疾患のほかにも外傷や炎症、変形性関節症や代謝性疾患・神経筋疾患その他いろいろな原因が考えられます。これらは問診と丁寧な診察で鑑別できるでしょう。
例えば夜間に痛みが増大する場合は類骨骨種、2〜3ヵ月で腫瘍の増大が見られる場合は骨肉腫、癌の既往があった場合は癌の骨転移が考えられます。
血液検査
骨肉腫は、一般的に血液データでの異常所見はあまり見られません。しかし腫瘍マーカーの一種であるアルカリフォスファターゼの上昇が見られます。
画像検査
画像検査には以下が挙げられます。
レントゲン
CT
MRI
骨シンチグラフィー
PET(陽電子放出断層撮影)
レントゲンでは骨の表面の骨皮質の破壊像や骨破壊と骨形成のバランス、辺縁が明瞭なのか不明瞭なのかの所見、腫瘍の浸潤に対応して骨の表面に新たに骨が作られている像(骨膜反応)の所見などがわかります。
レントゲンでは判別できない微小な変化を見つけられるのがCT検査です。MRI所見では、手術時に切除範囲を決めるために多く用いられます。また病変の性状も評価できる検査です。
例えば組織の硬い肉腫では、化学療法後に細胞が壊死に陥っていても縮小しないことがあり、効果がわかりにくいことがあります。
しかし、MRIを撮影することにより化学療法の前後で効果が出ていることが検証できるのです。骨シンチグラフィー、PET検査は転移の検出に用いられます。
生検
骨肉腫の診断の決定打となるのが生検という病理組織検査です。腫瘍組織を採取して、細胞を病理医が良性なのか悪性なのか、どのような病気なのかを診断します。
生検は針を刺して組織を採取する針生検と、手術によって組織を採取する切開生検や切除生検などの2通りです。
骨肉腫では正確な診断のために手術で十分な組織を採取するのがよいとされる方針もある一方で、切除してから高悪性度の肉腫であると診断されると、追加で切除する必要が生じるリスクも予測されます。
骨肉腫の治療方法
外科手術がすべての肉腫の基本的な治療ですが、近年の臨床研究で抗がん剤治療(化学療法)を手術の前後に行うことが標準的になっております。病態によっては放射線治療を追加します。
手術(広範切除)
腫瘍細胞を取り残さないために、腫瘍を正常な組織で包み込んで切除するのが広範切除です。そのため腫瘍周囲にある正常な骨や筋肉も一部一緒に切除する必要があります。
できるかぎり手足を温存するような手術(患肢温存術)を試みていますが、腫瘍が重要な神経や血管を巻き込んでいる場合には切断を選択せざるを得ないこともあるでしょう。
また、手足を温存できた場合でも、人工関節や自分の骨を再利用するような再建術の併用が必要になることが多くあります。手術前後の化学療法の併用が必須になり、トータルで半年から1年の治療期間が必要となります。
化学療法
近年、骨肉腫に対して広く用いられている化学療法は、以下の4剤を用いた多剤併用療法です。
アドリアマイシン(DXRまたはADM)
イホスファミド(IFOまたはIFM)
シスプラチン(CDDP)
メトトレキサート(MTX)
MTX・ADM・CDDPは昔から使用されている代表的な標準治療で、欧米でも標準治療として用いられております。IFMは1980年代の試験で結果が出てから補助化学療法に導入されていますが、その位置づけはまだ確立されていません。
近年、術後化学療法にIFMを併用することがMAP療法単独施行に対し優れているかどうかの比較試験が進行中です。具体的な薬の選択や使う時期にはいろいろな方法がありますが、通常はまず化学療法を行った後に外科的切除を行い、術後にも化学療法を追加します。手術療法と化学療法の併用治療により、骨肉腫は良好な生存率が期待できるようになりました。
放射線治療
骨腫瘍は放射線感受性が低いものが多く、通常の放射線治療のみでの根治はあまり期待できません。しかし、通常の手術・化学療法だけでは治療が難しい場合に、補助療法として術前あるいは術後に行うのが放射線治療です。
さらに根治が難しい場合でも、腫瘍による痛みや麻痺などの症状緩和目的で放射線治療を行っています。痛みに関しては約7〜8割のケースで症状の緩和が得られます。
配信: Medical DOC