腱鞘巨細胞腫の治療
腱鞘巨細胞腫の治療は手術による全摘出術が推奨されています。腱鞘巨細胞腫の摘出術は部分麻酔もしくは全身麻酔でおこなわれます。
関節まで腱鞘巨細胞腫が浸潤していた場合は、靭帯や関節包(かんせつほう)などを切開して関節内の腫瘍まで摘出する必要があります。なお、腱鞘巨細胞腫は完全に摘出できたとしても、10〜30%程度の比較的高い確率で再発することが知られています。
再発の理由は、完全な細胞組織の摘出が難しいためと考えられています。したがって、再発してもすぐ対処できるように経過観察が必要です。
ただし、がんなどの悪性腫瘍と異なり、他の部位へ転移することはほとんど報告されていません。
腱鞘巨細胞腫の摘出術をおこなった後も関節の可動域制限が残っていた場合には、関節の可動域や周辺の筋力の回復を目的にリハビリも行います。
腱鞘巨細胞腫になりやすい人・予防の方法
腱鞘巨細胞腫の発症原因が詳しく解明されていないため、この病気になりやすい人もはっきりとは定義できません。40歳前後で好発し、男性よりも女性に多く見られることはわかっています。
腱鞘巨細胞腫は外傷や脂質異常症が原因で発症するケースがあると考えられています。したがって、労働環境などの理由から手をよく使い、怪我をしやすい人は発症リスクが高くなる可能性があります。また、脂質異常症の治療をしている人も注意が必要です。
予防方法も現在のところ確立されていません。進行性の疾患であり、早期発見と早期治療は重要だと言えます。自覚症状に乏しいことから放置されがちな疾患ですが、病変に気づいたら整形外科を受診しましょう。
また、腱鞘巨細胞腫は比較的再発しやすい疾患としても知られています。手術で摘出できたとしても再発の恐れがあるため、経過観察を怠らないことが再発予防につながります。
関連する病気
色素性結節性絨毛滑膜炎
良性腫瘍
悪性腫瘍
参考文献
日本整形外科学会 軟部腫瘍診療ガイドライン2020
公益財団法人がん研究会腱鞘巨細胞腫
日本形成外科学会 形成外科診療ガイドライン2015
日本がん診療学会 がん診療ガイドライン
坂井達弥 et al 母趾屈筋腱腱鞘より生じた腱鞘巨細胞腫の1例 整形外科と災害外科 68巻2号2019
配信: Medical DOC