【闘病】目の見えづらさの原因は「多発性硬化症」だった… 一生付き合うからこそ人生は楽しく

【闘病】目の見えづらさの原因は「多発性硬化症」だった… 一生付き合うからこそ人生は楽しく

S・Iさんは、高校生時代に「多発性硬化症(MS)」と診断されました。多発性硬化症は中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患に分類され、再発と寛解を繰り返し、徐々に悪化していく難治性の病です。それでもS・Iさんは現在、仕事や趣味を楽しみながら生活を送っています。S・Iさんの体験から多発性硬化症とはどのような疾患なのかを知っていきましょう。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年7月取材。

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体験者プロフィール:
S・I(仮称)

30代女性。2011年頃、左目の見えにくさを感じたことから眼科を受診し、視神経炎と診断を受けた。大学病院へ転院してステロイドパルス療法を行い、視力は回復した。入院中にMRIを撮影したところ、脳内に白い斑点が複数個所見つかり、萎縮も見つかったため「多発性硬化症(MS)」の疑いとの説明を受けた、神経内科の有名病院へ転院し、改めて髄液検査などを行った結果、多発性硬化症の診断が確定した。

記事監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

突然の発症に戸惑った高校生時代

編集部

はじめにS・Iさんが自身の闘病を通して、一番伝えたいことは何でしょうか?

S・Iさん

多くの人に知ってほしいのは、多発性硬化症は一生付き合っていく病気ですが、「できる範囲でやりたいことにチャレンジして、人生を楽しんでほしい」です。自分の体でありながら、できなくなることも多い疾患だからこそ、そう思います。

編集部

S・Iさんの病気が判明した経緯についても教えてもらえますか?

S・Iさん

きっかけは高校生だった2011年11月に、目の見えづらさがあって近くの眼科を受診したことでした。そこで視野狭窄や反応の低下があり、視神経炎の疑いとなって大学病院へ紹介されました。視神経炎は入院中のステロイドパルス療法で回復しましたが、医師から「一応MRIも撮っておこう」と言われて撮ってみたところ、脳に白い斑点が見つかりました。さらに詳しく検査するため神経内科の有名な病院へ転院しました。そこで髄液検査や脊髄のMRIなどの検査を経て、最終的に「多発性硬化症」と診断されました。

編集部

多発性硬化症とはどのような症状が起こるのでしょうか?

S・Iさん

多発性硬化症は神経を覆う髄鞘が破壊されることで、視力障害や運動障害、感覚の異常、認知機能障害、排尿障害など神経に関係した色々な症状が表れます。最初に発症した視神経炎もおそらくその影響です。発症から10年以上経過して、現在は足の力が入りづらくなっており、長く歩くことが難しく、右手も麻痺したような状態で細かい作業がしづらくなっています。

編集部

多発性硬化症はどのような治療を行うのでしょうか?

S・Iさん

発症初期の急性期であれば、ステロイド薬を投与するステロイドパルス療法を行うそうです。そのほかには抗炎症効果のあるインターフェロン治療、疾患の原因物質の産生や作用を抑制する疾患修飾薬による治療もあります。現在は疾患修飾薬のケシンプタを使用中です。

編集部

医師からは病気についてどのような説明があったのでしょうか?

S・Iさん

発症当時、医師からは「これからずっと付き合っていく病気だけど、再発の回数やライフプランに合わせて相談しながら薬を選択しましょう」と言われました。

編集部

そのときは高校生だったそうですが、病気の告知を受けたときの心境は複雑だったかと思います。

S・Iさん

治ることのない病気で、また高校生だったこともあり、人生への大きくて漠然とした不安を覚えました。「これから自分はどうなるのだろう」「歩けなくなったらどうしよう」など、ネガティブな想像が次々と湧いてきました。

周囲の人に感謝しながら仕事と趣味を両立

編集部

多発性硬化症と診断を受けてから、体調や生活に変化はありましたか?

S・Iさん

社会人になるまでは年1回くらいのペースで再発しましたが、寛解すれば症状は残りませんでした。しかし、社会人になって薬剤師として働き始めてからは、徐々に再発の回数が増え、症状も残るようになり、できないことや諦めなければいけないことも増えてきた印象です。働き始めたことで疲労やストレスが増え、免疫力が落ちやすくなったことが再発に影響しているのだと思います。体を動かすことは好きなので、できないことが増えるのは辛いことです。

編集部

S・Iさんが治療中やこれまでに心の支えにしてきたものは何でしょうか?

S・Iさん

病気のことを受け入れてくれる家族と友達、そして私を良い意味で特別扱いしない夫の存在です。病気は大変なことも多いですが、支えてくれる人がいるからこそできることもあり、諦めることなくチャレンジできる部分もたくさんあります。

編集部

現在の体調や生活、日々取り組んでいることについても教えていただけますか?

S・Iさん

2023年から薬を切り替えたこともあり、それに伴って再発も多くなり、なかなか思うように日常生活を送れていません。それでも周囲の方々の理解もあり、勤務形態を調整しながら、薬剤師としてフルタイムで働いています。また、できることは何でもやりたいという想いで、趣味のゴルフも工夫しながら楽しんでいます。ですから、同じように病気で苦しむ方には、やりたいことを諦めないで、体と上手く付き合っていってほしいです。

編集部

病気になる前の自分にアドバイスできるなら、どんなことを伝えたいですか?

S・Iさん

「やりたい」と思ったことは、ひるまず今のうちにチャレンジしなさいと伝えたいです。やりたいと思ったときにやらないと、後悔することもあるからです。周囲の人の手を借りてもいい、悔いのない時間を過ごすことが大切だと感じているからです。

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